[原子力産業新聞] 2000年1月5日 第2019号 <3面>

[フランス] 仏電力公社、既存炉の長期利用を明言

「競争市場でメリット」

フランス電力公社(EDF)のL・ストリッケル原子力発電担当取締役は先月、「欧州の自由化された電力市場においては原子炉を運転寿命の最大限まで活用することが戦略上、非常に重要」との見解を明らかにした。

これはフランス原子力学会(SFEN)が先月始めにパリで開催していた「競争の中の原子力」という国際会議の席上で述べられたもの。ストリッケル取締役はまず、現在フランスで稼働する原子炉の平均運転年数が15年ほどで、それぞれ40年の炉寿命が期待できると指摘。少なくとも今後20年間は競争力や環境保全の両面で優れた、EDFの主要電源であり続けるとの認識を示した。ただし同氏は、実際の原子炉寿命は欧州連合(EU)域内で展開されている「電力価格戦争」で同社がいかに勝ち残るかによって左右されてしまう点も指摘している。

同取締役は次に90万キロワット級の原子炉1基を例に挙げ、保守点検費用を現在のレベルで維持できれば、新たな設備を作る場合と比較して数億フラン単位の節約が可能だと述べた、同氏によれば原子炉の投資コストはキロワット時あたりの発電コストの28%を占めているが、2005年時点でこの割合は半分に低下、2010年には実質ゼロになる計算だと指摘し、原子炉を長く使うことの重要性を訴えた。

同取締役はまた、EU域内の電力市場では新旧の発電業者がEDFより安い電力供給で市場のシェア獲得を狙うなど、一定期間にわたって電力の低価格化を実現した者が勝者となる構造から、EDFとしても2002年までにキロワット時あたり3サンチームの発電コスト削減を目指していることを明らかにした。

また、こうした市場背景からEDFの原子力発電部門が次の5点を戦略目標にしていることを明らかにした。すなわち、1.需要や価格の急変に素早く、 柔軟に対応できるよう発電能力の合理化を図る、2.EDF全休の発展に貢献するため、コスト削減のテンポを加速し、収益マージンを増やす、3. 「原子力は安全でクリーン、 なおかつ安い電源」という信用を取り戻す、4.安全基準の遵守によって原子炉の運転寿命を保証する、5.品質管理を合理化する−など。


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