[原子力産業新聞] 2000年1月13日 第2020号 <1面>

[原子力予算] 来年度原子力予算案決まる

科技庁3,215億円、通産省1,520億円
防災・安全対策を充実化、高レベル処分事業への対応も重点

科学技術庁と通産省の来年度原子力関係予算政府案が決まった。科技庁分は一般会計が1,743億1,000万円 (今年度比4.4%減)、電源特会が1,471億4,700万円(同5%減)で合計3,214億5,700万円 (同4.7%減)となった。通産省分は一般会計3億1,000万円 (同6.7%増)、電源特会が1,516億9,000万円 (同15.5%増) の合計1,520億円(同15.4増)と大幅増額となった。来年度はJCO事故を踏まえ、原子力防災・安全対策の充実とともに、高レベル廃棄物処分事業化への準備や中間貯蔵対策にも重点が置かれている。(4,5面に科技庁、通産省の予算案表)

科技庁予算案については、来年1月から内閣府、経済産業省で執行されるものも含まれている。

予算案を機関別にみると、日本原子力研究所は1,082億2,200万円で今年度比4%減となった。今秋には千葉県柏市に本部を移転する予定になっている。

原研予算では、核融合研究に152億7,000万円を計上。うち国際熱核融合実験炉(ITER)計画・工学設計活動協力費に34億4,000万円を充てる。

また高温工学試験研究炉 (HTTR) での研究・運転費として約34億円。SPring-8に関する研究開発に約58億円。さらに高度計算科学技術の推進費に約43億円を充て、うち地球規模の気候変動等の解明・予測に利用する地球シミュレータの開発に28億円を投入し、来年度に横浜市に完成を目指す。また中性子科学研究に約31億円、光量子科学研究に約18億円を投入し、基礎研究を継続する。

サイクル機構は一般会計 (346億6,300万円、同11.7%減)、電源特会 (1,012億1,300万円、同3.4%減) で合計1,358億7,600万円 (同5.6%減) となった。

一般会計分では、FBR研究開発に約90億円、核燃料サイクル研究開発に約100億円の計上となった。これらのうち、今年度から始まった電力との共同研究であるFBRサイクル開発戦略調査研究に約27億円。また昨年末の補正予算で建設が認められた原子力緊急事故対策支援・研修センター (仮称) の運営費に1億4,700万円が初計上されている。整理事業のうち海外ウラン探鉱権益維持費には1億6,400万円、そして鉱山跡処置技術開発費に約4億円が充てられる。

電源特会 (多様化勘定分) では「もんじゅ」の維持管理費に約97億円、再処理施設の運転に約53億円。そして2000年レポート作成作業が終了し、一般会計から振替となった高レベル処分の共通研究開発費として約32億円が計上された。

放医研は151億3,300万円 (同1.6%減)。重粒子線がん治療臨床試行の推進に67億7,000万円、国際宇宙放射線医学研究に1億5,800万円が手当てされている。また理化学研究所(原子力関係)は77億6,300万円 (同16.4%増) で、重イオン科学研究に16億1,700万円。今年度から本格化するRIビームファクトリー設置計画の推進に約42億円が充てられる。

一方、原子力安全の安全・防災対策も充実。原子力安全局や安全委の予算が増額されている。PA予算は約41億円の計上。また新たにウラン加工施設事故影響対策特別交付金20億円が認められ、茨城県に交付される。

通産省は来年1月の省庁再編により新たに経済産業省となるが、その際に原子力関連施設に関する規制をほぼ一元化する規制機関「原子力安全・保安院」が工ネ庁内に設置されることとなっている。

通産省予算では、2000年度は高レベル放射性廃棄物処分の実施主体の設立が予定されるなど、核燃料サイクル方面での更なる進展が見込まれており、核燃料サイクル関連費用は大幅に強化され137.8億円 (今年度比84.3%増) が計上された。

具体的には、処分事業を適切に推進するための調査費として58億円が新規で計上されたほか、電源多様化技術評価費の中の地層処分事業化へ向けたサイト評価などのための費用も4.3億円と増額計上されるなど、廃棄物対策処分のための費用として総額で90.6億円が計上された。また6月に改正炉規制法が施行され、事業化の準備が整う「使用済み燃料の中間貯蔵対策」についても、中間貯蔵施設の安全性確認を行うクロスチェックに用いる解析コードの改良などを目的とした試験のための費用が新規増設されるなど、総額で14.7億円 (昨年度予算額=9.4億円) と大幅に増額された。なお JCO 臨界事故関連では、事故による経済的、健康的、精神的な影響などの緩和、回復のための交付金として10億円が計上されているほか、安全審査・検査体制の整備および原子力施設の防災対策などの緊急時対策の機運のための費用も、それぞれ増額で計上されている。

一方、原子力に対する不安感・不信感を払拭すべく、広報・立地促進対策にも引き続き力を注いでいく方針だ。特に地域振興策の強化については、原子力発電施設等周辺地域交付金と電力移出県等交付金を統合・拡充した「電源立地特別交付金(仮称)」が470.8億円 (今年度の相当額=401.6億円) で計上されるなど、総額で1,032.4億円 (今年度予算額=880.6億円) と大幅アップされている。


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