[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <1面>

[資源エネ庁] 原子力広報評価検討委、報告書骨子案まとめ

 通産省・資源エネルギー庁公益事業部長の私的懇談会である原子力広報評価検討委員会(座長・田中靖政学習院大学教授)は2日、今年度第5回会合を開き、同検討会ワーキング・グループが提示した「平成11年度報告書骨子(案)」についての議論を行った。昨年度報告書の内容を更に深く掘り下げることを課題として始まった今年度は、昨年9月の臨界事故により原子力に対する国民の不安が高まるという現状の変化が起きたことから、骨子案では「臨界事故後」の現状認識および広報の当面の重点課題なども示され、事故後に対応した施策を提言。またリスクコミュニケーションの手法の活用や広報評価システムの構築など具体的提案も示された。3月中に報告書案がまとまる予定。

 99年度検討委員会の主な検討課題とされたものは(1)受け手の特性等の更なる分析(2)コミュニケーション手法の原子力広報への応用(3)マスメディアヘの対応(4)施策評価システムの検討(5)よリ効果的な広報施策体系のあり方(6)情報の内容・表現方法の精査――の6点。骨子案では、これら課題については昨年11月に実施され、現在取りまとめ中の「第13回エネルギーに関する世論調査」の調査結果および、ワーキング・グループにおける各テーマに沿った専門家の講演などを基に、低関心層の実態および臨界事故の影響、影響を与える情報源などについて更なる分析を行い、報告書に盛り込むとしている。また、可能であれば他の調査結果から、現在の日本人の考え方について分析したものを加えるなど、内容を補強することも検討中だ。

 加えて臨界事故により「現状が変わった」ことを受け、骨子案では現状認識について、同世論調査では現時点で(1)原子力発電の必要性についての認識には事故後も「あまり変化が見られない」ものの、必要性と安全性の乖離が特に立地点で大きくなった(2)情報公開に対する評価が近年の努力にも関わらず、事故の影響により下がっている――などが「とりあえず言える傾向」としてみられるとして、「原子力発電に対する不安感増大への対応」と「原子力の信頼回復に向けた取り組みの強化」を、広報からの当面の課題として提示している。

 なお骨子案には「具体的提案」も盛り込まれており、(1)原子力に対する国民の不安感の増大に対応し、信頼回復に向けた取り組みを強化するために「リスクコミュニケーション」の手法を原子力広報分野においても活用していく(2)次世代層を始めとする一般国民に対して、放射線についての広報強化、学校教育におけるエネルギー原子力教育の充実、徹底した情報公開の推進などを実施して、専門知識の普及を図る(3)第三者機関として「広報施策評価委員会」を活用し、原子力広報施策体系全体に対する評価を行うシステムを構築する(4)課題解決型の広報施策の体系化を構築する――などを委員会からの提案として示すとともに、「事故時の広報のあり方」および「若年層(低関心層)への広報対応のあり方」を、今後の課題として挙げている。


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