[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <1面>

[原子力政策円卓会議] 東海村村上村長が住民アンケート結果を説明

 原子力委員会が設置する「原子力政策円卓会議」の最終会合(第7回)が7日、東京・港区の品川インターシティホールで開催され、村上達也東海村長らを招いて今後の安全規制やエネルギー供給のあり方などについて議論が行われた。

 

 今年度の円卓会議は昨年度の同会議の提言を受けて継続されたもので、核燃料サイクルや廃棄物処分問題について、また国会議員や電力生産地住民などを招いて議論してきた。年度内に原子力委員会に対する提言をまとめていく。今後の円卓会議については、提言等を受け、原子力委で検討する。

 今回はまず議論の土台として村上東海村長から発言を求め、それに対して各招聘者がコメントする形式で始まった。村上氏は、動燃改革やアスファルト施設事故対策などで揺れた97年に村長に就任し、原子力界と接するようになったという経緯を述べた。その上で臨界事故の背景として、これまで「金太郎飴」のように画一的な安全性が結論だけで押しつけられてきた感を訴え、将来的に危惧していたときに今回の事故発生となったとし、その原因として第一に業界内部のモラル低下を指摘。第二に安全規制行政の弱体化、第三に危機管理・防災体制の不在を掲げ、関連して昨年末に実施した住民へのアンケート結果を示し、事故後の原子力の安全推進に対する肯定的な感見は減少したものの、「村を原子力安全のモデル自治体に位置づけるべき」とする声が調査対象者の52.8%に達したことなどから、「村民は冷静な見方をしている」とこれを受け止め、今後の「村政の座標軸」を考え直していく材料としていくことにも触れた。

 続けて村上氏は課題として(1)安全規制・防災(2)高レベル廃棄物(3)東海1号炉の廃炉――を挙げ、政府・事業者の努力、さらには「ニュークリアセイフティネットワーク」への期待感を示した。特に廃棄物問題については高レベルに限らず、他地域で生じた廃棄物も含み、液状で不安定なものもあることから早急な解決を切望。また今後は村として新エネルギー開発にも関心を向けていきたいとした。

 山地憲治東大教授は、社会に対して「絶対安全」を主張しがちな現状を批判し、技術には多くのリスクが伴うことを挙げ、このようなデータを収集し公開するようなシステムの必要を訴えたほか、業界内の自主的規制も含めた原子力安全規制のあり方にも触れた。今回の招聘者の間では現行のダブルチェックシステムを見直すべきとする意見もいくつかみられた。さらに、山地氏はエネルギー全体の中で原子力を論ずるべきとし、「エネ基本法」「総合エネ政策法」などを制定する必要性に言及したが、木元教子原子力委員は現在の総合エネ調査会に属する部会が、それぞれの独立した議論により互いに矛盾している点を指摘した。

 また、鳥井弘之日経新聞論説委員の「エネルギーベストミックス」の具体的指標を、といった意見について、科学ジャーナリストの中村政雄氏は「自給率」を掲げて、将来の「第3次石油ショック」などのエネ危機に備え、外交上もエネ自給率水準を引き上げておく必要を訴え、今のわが国では原子力が不可欠との見解を述べた。


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