[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <2面>

[原子力委員会・長期計画策定会議] サイクル政策の方向性等を議題

 原子力委の長期計画策定会議第2分科会(座長・近藤駿介東京大学大学院工学系研究科教授、前田肇関西電力取締役副社長)が1月19日、開かれ、核燃料サイクル政策の方向と原子力産業のあり方についてプレゼンテーションを行い、それをもとに議論した。

 まず、榎本聰明東京電力常務取締役が「電力自由化と原子力」「リサイクル技術の進展」をテーマに発表。電力自由化の現状を説明した上で、原子力発電の特徴として経済性確立に向け意欲ある企業経営が求められることや、「終着駅のない」課題としての安全確保を挙げ、民間活力を生かしこれら特徴を踏まえた枠組みを構築すべく幅広い議論が必要だと主張した」。

 また、内山洋司電力中央研究所上席研究員は、この長計改定議論では、今エネルギー需要の伸びが低調にあるという認識が欠けていると指摘した上で、エネルギーの重要性から、規制緩和の流れを受けて企業が単純にコストダウンだけで判断するのは危険と警鐘を鳴らした。

 石井保三菱マテリアル取締役は原産会議調査を引用し、新規原発の建設が少ないことなどから、国内原子力産業の売り上げ高はこの5年間ほど下降傾向にあり、核燃料サイクル関連も低位安定しているようにみえると概観したが、フロントエンドについては個々に年を追ってみると、顕著な変動が認められ不安定な市場になっていると懸念した。その上で、わが国の核燃料サイクルはその時々の原子力発電を支えるという側面が強く、巨額を要し建設期間も長いため、政治・社会情勢の影響を受けやすく「ハイリスクな産業」になってしまっているとも分析。経済性については、加工工業では中規模かつ低稼働率の経営が避けられないため、世界での再編成が進む中、国際競争力の面では劣勢に立たされる恐れが大きいとも指摘した。

 前回会合の論点を受けて、宅間正夫原産常務理事は、核燃料サイクルの国内完結は国策だが、安全・コスト効率性の追求は民間による市場経済活動に委ねるのが基本で、その両立は事業存続の基盤でもあるとの見解を示し、民間の事業は市場が「最大の監督者」に位置づけられると述べた。同氏はまた、核燃料サイクル各事業は発電収益が発・受注の関係を通じて、企業間に再配分されることで成り立っていることから、発電収益減少の恐れや受注の不安定さなどから、国の関与・支援の必要性にも言及した。


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