[原子力産業新聞] 2000年2月10日 第2024号 <3面>

[寄稿] MOX利用「核不拡散上、好ましい」

 米国の著名な近代歴史家であるとともに「原子爆弾の誕生」でピューリッツァ賞を受賞したことでも知られるりチャード・ローズ氏はこのほど、ロスアラモス国立研究所のデニス・ベラー氏との共著で原子力発電の積極的な利用を強く訴える内容の論文を「Foreign Affairs」誌の1月/2月号に寄稿した。

 単刀直入に「原子力発電の必要性」と題したこの論文の中で、著者は原子力の発電コストの低さ、安全性、燃料のエネルギー密度が高く温室効果ガスを出さない点などを強調するとともに、「使用済み燃料を再処理せずに埋設してしまうことは皮肉にも核の拡散リスクを増大させる」と述べてMOX燃料利用を通じた核燃料サイクルの利点を力説しているほか、原子力オプションの研究開発支援を専門とする国際機関の創設を勧告しているのが大きな特徴だ。

 著者はまず人口60億に達しようとする世界中の人々の生活の中でエネルギーや電力が果たしている役割に触れ、世界が貧困や疾病などと無縁の発展を遂げるためにはエネルギーの安定供給は欠かせないと指摘。英国王立協会や王立工学アカデミーが原子力と気候変動についてまとめた99年報告の内容を引き合いに、大気および地表の汚染、地球温暖化など環境への長期的なダメージを伴わずに増大する世界のエネルギー需要に対処していくことが緊急の課題だと訴えた。

 また、現在世界で使われているエネルギー源の内訳を説明。電力需要の79%を原子力で賄うフランスを含め、世界で合計434基の原子炉が10億以上の人々のニーズに応えているという現状とともに、原子力発電所の良好な運転実績を紹介している。

 著者は次に、原子力以外の電源の特徴と長期的な電源として不都合な点をつぶさに列記した。石炭や天然ガスによる発電がざまざまな有毒ガスを排出するという事実のほかに、太陽熱は膨大な敷地面積や鉄資源を必要とすること、水力は大規模な自然環境破壊をもたらし、風力、地熱などの再生可能エネルギーは産業利用するにはあまりにも効率が悪い――などの説明を詳細に加えている。一方、原子力に関して著者は始めに一般的なメリットについて述べた後、MOX燃料としてのプルトニウム利用に言及。プルを抽出しないままの使用済み燃料は核兵器の製造を容易にするため、そのまま埋設処分することは長期的な核拡散リスクを増大させると強調している。ウラン資源の有限性を考えても、また、放射性廃棄物の半減期を短かくする意味でもプルトニウムをエネルギー源としてリサイクルすべきだとの認識を表明したもの。

 また、次世代の原子炉として著者は出力の小さいモジュール型式のものに競争力があるとの考えを示している。これに関しては米国エネルギー省がこの種の新型炉設計3つに予算をつけたほか、南アフリカ共和国の国営電力(ESKOM)会社がモジュラー式ペブルベッド型高温ガス炉の開発を積極的に進めていることを伝えており、この種の炉はインフラ整備の未熟な発展途上国への設置にも適しているとの見解を披露した。

 こうした実情を背景に、最後に著者は将来的な展望として、各国の総エネルギー消費量やGDPに応じた資金拠出によってエネルギー、特に原子力オプションの研究開発支援に焦点を当てた国際機関を創設するよう勧告。これはもともと英国王立協会らの発案であることを明記した上で、「信頼のおける国際的な燃料貯蔵および再処理システムの設立、立地や資金確保、途上国におけるモジュラー型原子炉の認可などを支援する国際機関を年間250億ドル(2兆6,000億円)程度の予算で運営すること」を呼びかけている。


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