[原子力産業新聞] 2000年2月17日 第2025号 <3面>

[米DOE] 露の再処理停止支援を提案

 米国エネルギー省(DOE)のB.リチャードソン長官は7日、今年10月から始まる2001会計年度の予算要求額を公表したが、対ロシア核不拡散強化プログラムとして同国での再処理を一時停止させる支援事業予算1億ドル(109億円)を新規に計上していることか明らかになった。

 DOE全体の予算要求額は2000年度から9%増の189億ドル(2兆601億円)となっているが、このうち原子力関係予算は3億610万ドル(334億円)で、1,800万uの増額となった。この中には原子力研究開発費の9,220万ドル(約100億円)が含まれており、さらにこの中から原子炉合理化計画(NEPO)の500万ドル、原子力研究イニシアチブ(NERI)の3,500万ドル、大学の研究炉燃料支援費1,200万ドルを支出する予定になっている。

 放射性廃棄物処分に係わる予算は、民間放射性廃棄物基金の3億2,550万ドルと軍事用放射性廃棄物処分プログラムの1億1,200万ドルと合わせて4億3,750万ドル(約477億円)になる見込み。この中からユッカマワンテンにおける処分場としての特性調査継続費用3億5,830万ドル(2,660万ドル増)、廃棄物の輸送、受け入れおよび貯蔵費380万ドルなどが賄われる。

 新規計画である1億ドルの「対ロシア長期核不拡散プログラム」はDOEの核不拡散・国家安全保障局(ONNS)から計上されており、クリントン大統領の「脅威削減のための拡張イニシアチブ(ETRI)」の一環として米国の国家安全保障上、深刻な脅威となりうるロシアの核兵器製造コンビナートや民間原子力施設の影響を軽減する新たな方策として提案されたもの。ロシア側の案に準じて、同国のマヤク再処理施設におけるプルトニウム蓄積量の本格的な削減や核燃料サイクル施設での核不拡散性強化に7,000万ドル(76億3,000万円)を割り当てるほか、核兵器製造コンビナートの規模縮小加速、プルや濃縮ウランの最小数施設への統合、ロシア海軍サイトでの核物質防護強化などに残りの3,000万ドル(32億7,000万円)を費やす計画だ。

 これらを実行する具体策としては米国は次のような事業を計画している。すなわち、ロシア民生用原子炉からの使用済み燃料を再処理する代わりに乾式貯蔵する施設の設計・許認可および建殻を支援し、年間2トンのペースで抽出されているプルトニウム蓄積量の抑制を図る。使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物の永久貯蔵施設を開発するための共同研究プログラムを開始するほか、既存の原子炉や核燃料サイクル施設などを核不拡散性の高いものに改造できるよう設計要求項目の特定や開発を行う――など。

ロシア側は「両国政府の合意」を否定

 なお、この提案についてロシア側ではY・アダモフ原子力相がプル蓄積量の削減で原則的な同意の意向を示唆したに過ぎず、政府レベルの交渉開始は同プログラムを米政府が承認した後になると見られている。

同相は一部の報道機関による「米口両政府はすでにこの件で合意に達した」との報道を強く否定しており、モスクワを訪問中だったJ・マシューズ米カーネギー財団総裁との会見の席では、20年間で200億ドルの収益が見込める外国からの使用済み燃料受託再処理計画をロシア原子力省は今なお堅持していると言明。「イランのブシェール原子力発電所建設に対するロシアの援助を米国が阻止しようと試みるのも明らかに政治的な動機による」と述べ、今回の「対ロシアプログラム」によってロシアがイランその他の国々と取り引きするのを妨害することはできないと訴えた。

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