[原子力産業新聞] 2000年2月24日 第2026号 <3面>

[スイス] 専門家委、廃棄物処分で新概念勧告

 スイスの環境・輸送・エネルギー省は7日、同国における放射性廃棄物の長期的な処分概念について昨年から審査していた連邦政府の専門家グループが、「深地層処分に将来の回収可能性原則を組み合わせた最終処分」を提案したことを明らかにした。

 このグループは放射性廃棄物対策に関して国民のコンセンサスを得る試みの一つとしてエネルギー相のM・ローエンベルガー氏が昨年6月に設置したもので、ジュネーブ大学地質学教授のW・ウィルディ氏および関連科学の専門家6名で構成されている。

 同グループはまず、放射性廃棄物の処分における第一目的は人間とその生活環境の長期的な防護だと強調。その意味で浅地貯蔵技術や開放式の深地層処分概念は除外されるとしながらも、後の世に回収できる可能性を残す概念にも大衆の一部から要請が高まっていることを認めている。このため、新たな処分概念としては「深地層での長期管理貯蔵」を提案するとしながらも、これはいわゆる深地層処分の概念とは若干異なり、かなりの長期間にわたる監視段階と将来的な回収可能性を保持したものを指すとの認識を提示。具体的には次にあげる3つのプロジェクトで構成されることになると説明した。

 すなわち、@処分場として採択されたサイトの適性を確認するため、テスト用の処分揚を作るAその後に本格的な処分場を建設して埋め戻すが、最低100年の初期監視期間中は出入りが可能なルートを残しておく。テスト用、実規模用の2つの処分場ともに最終的には封印し、一般的な深地層処分場に移行させつつも回収オプションは維持するBこれと並行して、独自に指標となる研究処分場を実規模処分場とまったく同じ岩盤に作り、同じ種類の廃棄物試料を埋設する。こちらは実規模の処分場が封印された後も廃棄物の状態が確認できるよう開けたままにしておく。

 同グループはこの新しい概念が改訂計画中のスイス原子力法に反映され、公の場で広範囲に議論されることが望ましいとの見解を示すとともに、放射性廃棄物計画に係わる費用の独立性を保証すべきだと勧告した。同グループはこのほか、既存の国家研究プロジェクトについて次のようにコメントしている。

 ▽低・中レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地のヴェレンベルグは深地層処分および新しい長期管理貯蔵の両方の要求事項を満たしていると思われるので、新概念を実行する可能性をも念頭に置いて現在の特性調査を継続し、探査掘削を行うべきだ。

 ▽高レベル廃棄物処分のホスト岩盤としての可能性が検討されている「蛋白石系の粘土層」も原則的に2つの処分概念に適していると考えられるため、適性が公式に確認された場合は、最処分場として適切なサイトの特定調査を実施すべきだ。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.