[原子力産業新聞] 2000年3月9日 第2028号 <1面>

[通産省] 高レベル放射性廃棄物終処分法案固まる

 通産省は、高レベル放射性廃棄物処分を行う際に必要な枠組みを制度化するための法案「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案(仮称)をとりまとめ、3日開催の原子力委員会に報告した。法案では、処分地を決める際の3段階のプロセスを明確化するとともに、処分地決定後には、通産大臣が知事や市町村長の意見を聴いて最終処分計画を改定することを明文化している。また処分実施主体についても、「本法律に基づく認可法人」で、名称は「原子力発電環境整備機構」と規定している。通産省は今後、同法案を閣議決定後、今国会に提出する方針だ。

 法案は、わが国の特定放射性廃葉物(高レベル放射性廃棄物)処分を計画的かつ確実に行うために、最終処分費用の拠出制度、最終処分実施施主体の設立、拠出金の管理を行う法人の指定などといった関係規定の整備を行うもので、処分の安全規制については、別の法律で定める予定。

 法案の具体的内容を見て行くと、まず拠出金については、原子力発電事業者は拠出金額を拠出し、拠出を受けた処分実施主体は、その金額に見合う量の高レベル放射性廃棄物の処分を行うとしている。なお計画されているガラス固化体4万本規模の処分場で、固化体4万本を処分した際の費用は約3兆円。割引率2%で、原子力発電1キロワットあたり約14銭程度と見込まれている。

 また最終処分地の選定については、地層が長期間にわたって安定しているかどうかを調査する「概要調査」、地下施設を設けることにより、地層の性質が最終処分地に適しているかどうかを調査する「精密調査」を経て、「最終処分施設建設地」を決めるという3段階の選定プロセスを定め、選定の際の調査・評価事項を明確化するとしている。また処分地が決定した後、通産大臣が都道府県知事や市町村長の意見を聴いて、処分の実施時期や量などを内容とする最終処分計画を策定する。なおこの処分計画は、5年ごとに見直され、10年を1期として策定される。一方処分施設の安全規制は、別の法律で規定される計画だ。

 処分の実施主体については、位置づけは処分法案に基づく認可法人で、名称は「原子力発電環境整備機構」と定められる。この機構には国の出資は行われず、また数は限定されない予定。万が一の不測の事態により機構の業務が困難となった場合には、業務引継ぎなど必要な措置について、別途法律が定められる。

 一方、拠出金納付義務の対象とはならない研究試験炉からの高レベル放射性廃棄物についても「実施自体が業務に支障のない範囲で、委託を受けて最終処分することができる」と規定されている。

 事業資金の管理を行うのは通産大臣が指定する公益法人で、実施主体は大臣の認証を受けて、処分実施に必要な拠出金を取り戻すことができる。

 通産省ではこの法案を閣議決定後、今通常国会に提出する予定だ。


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