[原子力産業新聞] 2000年3月9日 第2028号 <2面>

[原子力委・長計第1分科会] 地域共生テーマに議論

 原子力委員会長期計画策定会議の第1分科会(座長・太田宏次氏、高原須美子氏、国民・社会と原子力)の第7回会合が3日、都内で開催され、原子力と地域振興との共生について議論した。まず下平尾勲福島大教授が「電源立地と地域振興」をテーマに見解を述べた。同氏は電源立地の前提条件は@安全性の確保A相互信頼B情報の提供――だと指摘。立地振興の現行制度の問題点としては、恒久的、広域的、総合的な電源地域の振興策になっていない立地促進策だとし、新規立地地域、増設地域、耐用年数20年以降の地域に分け、地域の状況に則した施策が必要だと述べた。

 また環境保全の観点から原発の立地の促進が主張されているが、現実には電力自由化の中で火力発電の立地が急増しており、制度上の矛盾だと指摘。エネルギーは最も重要な生活インフラであり、無資源国である日本は西欧とは異なった制度でもよいのではないかと論じた。さらに電源特会などによって地元に交付された資金が教育のためにかなり投じられているが、地元に大学が少なく、かなりの学生が大都市で学び、そこに定住するケースが多いなどの事例を紹介し、地元に交付金が還元されない構造になっていることも問題だと指摘した。

また住民投票等に見られるように地方分権主義についても議論され、西部邁委員は「原子力問題は地方分権主義と基本的に抵触する」とした。また新しい施策として神田啓治委員は県立発電所を考えるなど発想を変えてみるのも一考だと述べた。


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