[原子力産業新聞] 2000年3月23日 第2030号 <1面>

[福井地方裁] もんじゅ訴訟、原告の請求を棄却

 1985年9月に、当時の動燃事業団が福井県敦賀市に建設中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(28万キロワット)について、住民らが提訴していた同炉の設置許可処分は無効だとする内閣総理大臣に対する行政訴訟と、動燃に対して建設・運転の差し止めを求める民事訴訟の両訴訟について、福井地方裁判所(岩田嘉彦裁判長)は22日、立地条件、耐震設計、事故防止対策等、同炉の安全性は確保されているとして、いずれも「原告らの請求を棄却する」とする判決を下した。提訴から14年半の長期にわたって争われてきた「もんじゅ」訴訟は、これで一応決着をみることとなり、科学技術庁、核燃料サイクル開発機構とも今回の判決について満足の意を表明している。

 「もんじゅ」訴訟は85年9月に原発に反対する福井県民会議代表委員の磯辺甚三氏ら40名(現在は34名)が原告となり、国(内閣総理大臣)とサイクル機構を被告として@行政訴訟=原子炉設置許可処分の無効確認A民事訴訟=「もんじゅ」の建設・運転差し止め――を求めて福井地裁に提訴した訴訟。

 行政訴訟については、当初原告の訴える資格について議論が行われてきたが、92年9月に最高裁で原告の訴える資格を認める判決が出され、以降は福井地裁に差し戻され、同年11月から約7年半にわたって審理が行われてきた。争点となったのは「もんじゅ」の設置許可に際しての安全審査に重大かつ明白な瑕疵(法律上の何らかの欠点等)といえる不合理な点があるか否かという点だった。

 こうした点について今回の判決では「本件安全審査の調査審議に用いられた審査方針および審査基準に不合理な点があるとは認められない」とし、また審議や判断の過程で「重大かつ明白な瑕疵といえるような看過し難い過誤、欠落があるとは認められない」として原告の主張を退けた。また95年のナトリウム漏洩事故は「安全審査の合理性を左右するものではない」との見解を示している。

 一方、民事訴訟では「もんしゅ」の運転が原告の生命・身体に具体的な危険を及ぼす恐れがあるか否かという点が争点となっていた。これについて判決は、まず「原子炉施設の安全性の確保」を「原子炉施設の有する潜在的危険性を顕在化させないよう、放射性物質の環境への放出を可及的に少なくし、これによる災害発生の危険性を社会通念上容認できる水準以下に保つことにある」と規定し、こうした観点から「ナトリウム漏洩事故を考慮しても、原告の主張する生命・身体が侵害される具体的な危険があるとは認められない」とした。

 今回の判決について、中曽根弘文科学技術庁長官は「これまでの国の主張を全面的に認めていただいたものであり、満足のいくものだ」とし、今後とも安全確保に万全を期して原子力の開発利用を進めていくとの談話を発表。また都甲泰正サイクル機構理事長も「『もんじゅ』の安全性を求められたものであり、誠に意義深い」との見解を示し、「もんじゅ」の早期運転に努力していくとの談話を発表した。


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