[原子力産業新聞] 2000年3月23日 第2030号 <2面>

[原産・熱利用懇] 高温ガス炉で報告書

 日本原子力産業会議の「原子炉熱利用懇談会」(座長・生田豊朗日本エネルギー経済研究所会長)は17日、原産会議室で会合を開き、同懇談会の「原子炉熱利用に関する将来展開検討会」(主査・関本博東工大教授)が約2年間にわたって検討してきた「高温ガス炉の展望と実用化に向けて」と題する最終報告書を概ね了承した。報告書は高温ガス炉は優れた固有の安全性を備え、経済性向上、高温核熱エネルギー利用に高いポテンシャルを有していることから、我が国のエネルギー政策での同炉の位置づけを現在検討中の長期計画で明確化することや国主導で高温ガス炉システムの総合評価を行うよう提言している。

 現在、我が国の高温ガス炉は日本原子力研究所が所有する「高温工学試験研究炉」(HTTR、熱出力3万キロワット、炉出口冷却材温度950度C)がある。高温ガス炉は安全で、高温熱が利用できるという特徴があるが、一時国際的には開発の停滞が見られた時期もあった。しかし最近では南アや米国、ロシアなどで小型モジュールによる開発計画が進められるようになってきた。こうした状況を受け、同懇談会はガス炉の@特徴の整理A熱利用システムの検討B実用化への課題と方策――の観点から検討を行った。

 それによると、高温ガス炉は安全性や熱エネ供給の特長を有し、標準設計モジュール化、安全設備の大幅簡素化、需要地近接立地、シリーズ効果などによりコストを大幅に低減できること、熱利用システムでは発電や2次エネルギー媒体製造(水素、メタノール等)、還元鉄生産などに適用できるとし、こうした観点から実用化を図るべきだと提唱している。

 その導入シナリオによると、まず発電利用炉は2010年代に運転開始を想定した実用化に向けたフィージビリティ・スタディを実施し、総合評価を行い、並行して長期的観点からプロセス熱利用炉の1号機建設目標を2030年頃に置き、2050年頃の本格実用化を想定して開発を進めるべきだとしている。

 一方、HTTRについては現在の計画の着実な推進と、実用化に必要な各種試験等の実施を求めている。とくに水素製造等高温プロセス熱利用の研究開発計画については海外ニーズ動向なども見ながら長期的視点として取り組むべきだと述べている。

 今後、同懇談会では、現在検討中の原子力長期計画に高温ガス炉の位置づけを明確にするよう働きかけていく考えで、同検討会はフィージビリティ・スタディなどの検討を更に詰めていくため継続して審議する方針だ。


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