[原子力産業新聞] 2000年3月23日 第2030号 <3面>

[EC] CO2削減で新戦略

 欧州委員会(EC)は8日、97年の京都議定書に示された温室効果ガス削減目標を達成するためには欧州連合(EU)域全体で新たなイニシアチブに取り組む必要があると警告し、2つの戦略を並行して進めていくことになったと発表した。

 この日、ECが採択したのは「欧州気候変動計画(ECCP)」というEU域内における全体プランで、加盟国同士がエネルギー部門で排出権の取り引きをするシステムの設置を提唱しているほか、特定の電源による温室効果ガス排出の削減対策という並行イニシアチブを勧告しているもの。京都議定書ではEU全体で2008年から2012年までに90年の排出レベルから8%削減することが求められている。しかし、EUの最近のデータでは、CO2排出量は減少するどころかむしろ増加傾向にあり、目標値を達成するためには何らかの対策が必要なことは明白。それどころか、現在の対処方法をさらに強化しなければ逆に欧州全体で6〜8%増加すると予想されている。

 このためECCPは、エネルギー供給産業を始め、各国内のエネルギー利用産業や廃棄物管理技術、輸送など幅広い分野で多様な対策を取るものの、手始めとしてエネルギー、輸送などの産業部門で技術対策グループを設置し、1年以内に準備作業報告をまとめさせることを提案。11月にハーグで開催されるCOP6では柔軟性のある3つの排出量削減メカニズムの導入が詳細に審議されることになっているが、ECCPはこれについても焦点を当てるとしている。COP6では「共同実施」と「クリーン開発メカニズム」に原子力発電が係わる可能性についても検討される予定だ。

 柔軟性のある排出権取り引きに関してECは、EU加盟国域内で気候変動対策の潜在的な一方法としての理解を深めることや、このメカニズムについて競争原理を伴う域内市場を設ける可能性についても紹介している。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.