[原子力産業新聞] 2000年4月6日 第2032号 <3面>

[仏・EDF] 10年に1度の大検査

 フランス電力公社(EDF)は3月16日、同社が運転する58基のPWRのうち年内に着手する4基を皮切りに約半数の原子炉で、10年に1度の大規模な定期検査を総額15億ユーロ(1545億円)以上をかけて実施していくと発表した。

 EDFでは通常の小規模な定検のほかに、機器の大がかりな改造も含めた定検を10年ごとに実施しており、今回は70年代後半から80年代にかけて運閉した第1世代・90万キロワット級原子炉34基が対象となる。これらの炉の10年検査は2度目のことで、98年と99年にトリカスタン1号機とフュッセンハイム1号機で試験的に実施したのに続き、今年はダンピエール1号機、ビュジェイ2号機、トリカスタン2号機およびフュッセンハイム2号機で実施することになったもの。EDFは残りの28基についても2008年までに年に3〜6基程度のペースで順次、10年検査を行っていく。

 10年検査では、トリカスタン発電所で蒸気発生器取り替えに追加費用がかかった場合を別にしても、1基あたり初期投資の5%近いコストがかかる計算。フュッセンハイム1号機の例では9500万ユーロ(約98億円)を要したという。しかし、原子炉寿命に上限の設定がないフランスでは安全分析報告に準じた安全レベルで操業することが求められている。このため、EDFではこの検査を「安全確保のための大規模投資」と位置づけ、電力市場の自由化に直面するなかで原子炉寿命を最大限に活かすという戦略上の重要性を強調している。各発電所毎に1000〜2000人の作業員を使って4か月間に及ぶ同検査は、次の3つの点で大きな意味合いを持つ。

 @通常の燃料交換や保守点検作業に加え、ロボットを使った精密な圧力容器の検査および格納容器建屋と一次冷却系の漏洩検査を実施A最新の科学技術を採用した設備に改造し、発電所全体の安全レベルを大幅に強化するBさらに10年間の安全運転が可能なことを仏原子力施設安全局(DSIN)に対して実証することになる――など。


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