[原子力産業新聞] 2000年4月13日 第2033号 <1面>

[原産] 1999年末現在の「世界の原子力発電開発の動向」取りまとめ

99年末原発動向、運転中は425基

日本原子力産業会議は5日、1999年末現在の「世界の原子力発電開発の動向」調査を取りまとめ、発表した。99年末現在で世界の運転中の原子力発電所は425基、合計出力は3億5,942万5,000kWとなった。新たに営業運転入りしたのは3基だった。また建設中は49基、4,356万3,000kW、計画中は40基、2,741万3,000kWとなった。一方、今回調査では「電力市場自由化と原子力発電」をテーマにアンケート調査もあわせて実施。16か国の電力会社34社(日本を除く)から有効回答を得た。それによると、回答した会社が市場自由化の中でも原子力発電が存続できると考えていることか明らかとなった。【5面にアンケート調査結果】

99年末現在の原発開発動向調査は、世界31か国・地域の72電力会社等からの回答に基づき集計したもので、新規に運転入りしたのは韓国の月城(ウォルソン)4号機(CANDU、70万kW)と蔚珍(ウルチン)4号機(PWR、100万kW)の2基とスロバキアのモホフチェ1号機(VVER、44万kW)の3基。韓国はこれで16基、1,371万6,000kWの設備容量となり、ウクライナを抜いて世界第7位の原発国となった。

昨年中に閉鎖となったのはカザフスタンのシェフチェンコ発電所(高遠増殖炉BN-350)とスウェーデンのバーセベック1号機(BWR、61万5,000kW)の2基。カザフスタンが原発国から外れたため、原発が稼働中の国・地域は31となった。バーセベック1号機の閉鎖は政府の脱原子力政策に沿ったもの。

世界の電力会社にアンケート調査

一方、「電力市場自由化と原子力発電」をテーマに世界の電力会社に対して実施したアンケート調査では、「自由化の中で有利になると思われ る電源」について聞いたところ、コンバインドサイクル発電を舎む「ガス火力」がもっとも多く14社。「原子力発電」を挙げた電力会社は8社あったものの、「政給的障害が取り除かれること」や「既存の原発」「長期的にみると有利」などの意見が付けられている。逆に「不利になる電源」については、国によるばらつきが大きく、再生可能エネルギーの導入が比較的進んでいるドイツでは回答の半分の3社が風力や太陽エネルギーなどを挙げている。「原子力発電」と答えたのは7社あった。また「原子力発電所にはどのような利点があるか」を聞いたところ、「環境面」と答えた会社が最も多く24社。これに「供給安定性」が15社と続いている。「経済性」としたのは10か国・15社あった。さらに「原子力発電所の新規発注に際しての最大の障害」についての質問では、投資コストが大きいことによる「経済的要因」が13社と最も多く、続いて「国民の理解(が不十分)」9社などとなっている。

ところで「市場自由化は電力会社にとって有益か」という質問では、短期・長期的にみた場合とも、ほぼ半数を超える会社が有益と回答している。自由化の中で経営戦略上の優先順位を聞いたところ、第1位は「経済性」14社で、次に「供給安定性」10社と続いている。一方、「環境対策」を優先順位の1位に挙げている会社は1社に過ぎず、「市場自由化の中で環境問題への取組みが積極的でない現状が明らかになった」と分析している。


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