[原子力産業新聞] 2000年4月20日 第2034号 <1面>

[原研] JT−60、大幅改造へ

日本原子力研究所は2001年度から臨界プラズマ試験装置(JT160)の大幅な改造を行う方針を固め、3月の原子力委員会・核融合会議で説明した。日欧露3極で進めている国際熱核融合実験炉(ITER)が建設に向けた準備段階に入るのに対応して、ITER建設に不可欠な各種のプラズマ電流や機器材の性能・健全性データなどを取得するとともに、引き続きトカマク型核融合研究の先導的役割を果たしていくために行うもので、真空容器等の形状を大幅に変え、これまでの銅コイルから超伝鱒コイルに変更するなどして電流維持時間を現在の15秒から6倍以上の100秒を実現していく。改造費は400億円弱。改造後は広く大学・国公立研究機関等の参加を得て研究に取り組んでいく方針だ。

改造計画では2001年度まで運転を行い、同年度から04年度まで、コイル改修工事等を行う。運転は同年度後半から再開する予定にしている。

JT−60は1985年に稼働。すでに16年が立ち本体部分の老朽化が目立っている。91年には真空容器を縦長に変更するなど改造を一度行い、再稼働させているが、今回の改造は2度目。

改造の目玉はトロイダルとポ□イダルのコイルを銅コイルから超伝導コイルに変えること。銅コイルの場合は抵抗性を持っているので長時間の電流が流せなかったが、超伝導コイ川は発熱が任じないので長時間の電流を流すことができる。改造後は一度に百秒間の電流を流す計画。また真空容器を断面が円形に近い形から非円形型に変え、ダイバータ構造をこれまでのW型から左右の板が内側に寄った内寄せ構造とする。これらによって「負磁気シア運転」(電流の分布が凹状になっている状態)による長時間にわたるプラズマの高温度・高密度を維持することが一層可能となり、炉の小型化による定常運転に大きく近づくことができるとしている。

これまでJT−60は、負磁気シアモードを中心とする研究で世界をリードしており、96年度に臨界プラズマ条件を達成し、98年度には入力エネルギーと出力エネルギーの比であるエネルギー倍増率で世界最高値下1.25、イオン温度で5.2億度、核融合横でも177億度・秒・兆個/CCなどいずれも世界最高を達成。これらの成果によって定常運転手重視している「コンパクトITER」への方針転換に決髭的な役割声果たしてきた。今回の改造ではITER実現の架け橋として大きな期待がかけられている。

さらにこれまで主に原研内で利用してきた形態から大学や国公立研究機関、外国研究機関などの参加を得て、遠隔データアクセス、解析、共同実験などの幅広い機関との研究協力にも力を入れていく考えだ。


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