[原子力産業新聞] 2000年4月20日 第2034号 <2面>

[原子力委・長計策定会議] 第一分科会、報告書骨子案を審議

「国民・社会と原子力」をテーマとする原子力委員会・長期計画策定会議の第一分科会(座長・大田宏次氏、高原須美子氏)は13日の会合で報告書の骨子案を示し、審議した。

骨子案では、報告書の構成を第1章「文明と原子力」、第2章「国民・社会と原子力の−和」の2章立てとし、第1章では「文明の発展」「原子力とその可能性」について論じる。第2章では@国民-社会と原子力A安全確保のあり方B国民の信頼感、安心感の確保に向けてC政策決定のあり方D国民の信頼と安心の確保のための具体的取組みE国、地方自治体、事業者等の関係のあり方F立地地域の自律的な発展に向けて−の7つの項目を設けて記述するとしている。

第1章の「文明と原子力」では、まず人類は科学技術の進歩に支えられ、今日の高度な文明を築き上げたとし、今後も科学技術は人類共通の知的財産として更なる発展の基盤となることが期待されるとの見方を示している。またこれからは地球との共生を目指しつつ人間を価値の中心に据えた文明へと発展していくことが望まれるとし、その中で原子力は新たな知的フロンティアの拡大、国民生活の質の向上などに重要な役割を果たすことが期待され、世紀以降の文明の持続的発展を担うものとしての1つとして大きな可能性を有していると指摘している。

第2章の「国民・社会と原子力の調和」では、原子力はエネルギーや放射線利用の分野等で国民生活や経済社会に定着し、社会的な存在になっているとしながらも、信頼感の喪失、安全性への不安の高まりなどによって国民の理解.や信頼は低下していると論じ、@安全文化の定着化、明確な責任関係に基づく安令確保体制の整備A情報公閥、透明性の向上政策に対する説明責任B原子力・放射線教育の充実化、リスクヘの対応C第3者的組織が中立的な立場からマスメディア等による誤情報を指摘し、これに対応した正確な情報の発信D政策決定過程への国民参加−などに取組むことによって国民の信頼と安心の確保を図っていくことを述べている。

また原子力施設の立地についても触れ、地域住民の不安や不信への対応、立地地域の自律的な発展の方策について記述し、立地に関しては今後とも住民が直接意見を表明する機会が重要となってくるとし、とりわけ住民投票制度がについては今後検討されるべき大きな課題を有していると述べている。また立地についての国、地方自治体、事業者等の関係のあり方については、@国はエネルギーセキュリティなど国家的な見地から原子力開発利用が必要であることについて国民の理解を求めることに努めたり、電力消費地と立地地域との住民の間の原子力に対する意識の乖離あることから、それを埋める努力をするA事業者は原子力施設を安全に運転する第一義的責任を果たすB地方自治体はとりわけ原子力災害対策特別措置法で定められた事項に沿って実効性を高めつつ取り組むこと−などを掲げ、住民の不信・安全への対応、立地地域の自立的な発展に取り組む必要性を指摘している。同分科会では今後、骨子案をさらに議論し、5月中にも報告書案をまとめることにしている。


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