[原子力産業新聞] 2000年4月20日 第2034号 <2面>

[科学技術庁] 「安全・安心」に高い関心

科学技術庁は4日、98年度委嘱の原子力モニターから寄せられた意見を分類・整理し、原子力委員会に報告した。

原子力モニター制度は、国民的合意形成を目指し広く一般国民からの意見を吸い上げ行政推進に役立てることを目的として、77年度に設けられた。今年3月末現在で計1153名が委嘱されており、モニターを対象にアンケートなどによる意見・要望聴取の他、懇談会や見学会も実施されている。

今回報告された意見は、98年6月〜99年12月にモニター246名から寄せられた1418件の声で、事務局はこれらを「原子力開発利用政策「安全・安心、原子力と国民・社会」「エネルギーとしての原子力利用」「放射性廃棄物処分を含む核燃料サイクル」「放射線利用」「先端技術研究開発」「平和利用、国際協力」「JCO臨界事故」の8大項目に、さらにそれぞれこまかな中項目に分類、整理した。

集計の結果、大項目では「安全・安心〜」の意見が全体の54.6%と過半数を占め、他の項目を大きく凌いだことが明かになった。なお「JCO臨界事故」は9.2%だった。

また中項目では、「安余・安心〜」の下層項目の「教育、広報啓発活動、報道」に関する意見が全体の24・5%と1番多く、同原子力施設、放射線施設の安全確保」の14.9%などが続いた。なお、意見をモニターの性・年代別に見ると、男性からのものが63%、女性は37%で、男性は60代が最も多くほぼ半数、女性は上位2、30代併せてほぼ半数となっている。

寄せられた意見で、最も多かった大項目「安全・安心、〜」については、臨界市政、燃料データ疑義、2000年問題について、今後は事故を絶対起こさぬよう、原子力施設に対する安全確保、テロ・コンピューターハッカー対策など、監督官庁の厳しい対応を求める意見が多かった。

また「JCO臨界事故」関連では、これを教訓に原子力行政、産業、コスト、安全性.などについて見直すべきという指摘や、「仕事に携わっている人々を皆で応援し足を引っ張るようなことをしてはならない」という工-ルもあった。一方で、見学会に数回参加してきたモニターからは「所沢ダイオキシン問題」の経験から、茨城県産野菜の安全性をPRするよう、風評被害対策を訴える声も出された。

「平和利用、国際協力」については、日本は核を保有しない立場を強調するだけでなく、将来的な核の恐怖を阻止する役割を国際舞台で果たすべきという指摘もあった。その他では事故による遠隔地にも及ぶ放射能汚染への懸念から、原発新増設の国民投票実施、広報・啓発に向けた、各家庭への資料配付の必要を述べた意見などもみられた。


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