[原子力産業新聞] 2000年4月20日 第2034号 <6面>

[社会経済生産性本部] 「エネ・セキュリティ」で提言

社会経済生産性本部のエネルギー問題特別委員会(委局長・深見博明慶応大教授)はこのほど、昨年12月にエネルギー専門家を中心に自治体首長や消費者団体代表者などを対象に実施した、エネルギーセキュリティに関するアンケート調査等を踏まえた「エネルギーセキュリティの確立と21世紀のエネルギー政策のあり方」と題する提言をまとめた。提言では、原子力の必要性を認めるとともに、エネルギーベストミックスによるセキュリティの確保など、政策目標やその実施に向けたセキュリティの政策体系を示した新ビジョンの構築が必要だと指摘している。

提言では、今後のエネルギーセキュリティを脅かす不安要因が、アジアなど経済発展によるエネルギー需要の増加や原子力発電所の立地制約や原子力施設での事故、地球温暖化問題など多様化していることを挙げ、これらリスクの発生や大きな構造転換など世界を取り巻くエネルギー情勢の急激な変化に対応する、エネルギーセキュリティの新ビジョンの構築を求めている。

こうした認識を基に、@電力自由化における原子力開発と規制緩和とのバランス、新エネルギーに対するグリーン料金などの支援策の具体化の検討A省エネルギーを基本とした社会経済システムの構築Bグローバル化へのリスク管理と環境調和型社会構築に向けた総合的エネルギー政策の立案C現行の「長期エネルギー需給見通し」は政策目標達成は困難。急激な情勢変化を前提とした柔軟かつ現実的な見直しが必要C国会での積極的なエネルギー政策の審議−など11項目の提言を行った。

アンケートでは、現在のエネルギーセキュリティについて、専門家の約6割が「確保されていない」または「大きな不安要素がある」と答えており、「確保されていて問題ない」という回答は僅か1%だった。これを受け提言では、エネルギー基盤の脆弱化に対する認識は変わっていないとして、わが国におけるエネルギーセキュリティの重要性を再認識し、その位置付けを明確にすべきと訴えている。エネルギーセキュリティ確保という観点から原子力発電のあり方を聞いたアンケート結果では、専明家の約6割(「積極的に」73.7%、「慎重に」39.0%)、自治体首長の約7割(「積極的に」9.9%、「慎重に」59.2%)が「推進するべき」と回答しており、有識者の半数以上が必要性を認めている。提言では、原子力関連施設の安全性確立と放射性廃棄物への対策など多くの課題を早急に整備し、信頼回復に全力に努めると同時に、わが国のエネルギーセキュリティも原子力が効果的であるという理解を深めていくことが、再入拡大の重要な課題であると指摘している。

また、核燃料サイクル政策のあり方について、「すぐにでも全ての原子力発電所を廃止すべき」と回答した以外の専門家に質問したところ、67.8%「推進すべき」と回答した。しかし、「これまでの政策を積極的に進めるべき」(30.9%)、「ワンススルーも重要な選択肢として見直しを行うべき」(11.3%)、「ワンススルーに方向転換するべき」(5.6%)の回答に対して、「ワンススルー方式も選択肢に入れつつ、その実用化・商業化は慎重に推進すべき」(36.9%)の回答が最も多く、専門家の中でもやや慎重な意見が多い。

さらに、2030年までのエネルギーセキュリティ確保に貢献できる原子力関連技術として、専門家をはじめ多くの有識者が「使用済み燃料再処刑技術」や「高レベル放射性廃棄物処理処分技術」を選んでおり、現在の原子力発電のバックエンド関連の技術への期待が高くなっていることが伺える。


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