[原子力産業新聞] 2000年4月27日 第2035号 <2面>

[長期計画] 第2分科会、燃料サイクルの骨子案示す

処分廃棄物を区分化

「エネルギーとしての原子力利用」について審議している原子力委員会・長期計画策定会議の第2分科会(座長・近藤駿介氏、前田肇氏)は19日、第8回会合を東京都内で開き、宅間正夫委員(原産常務理事)から示された「核燃料サイクル政策の明確化」に関する報告書骨子案について審議した。同分科会では@新エネルギーとの非核等エネルギー政策の中の原子力利用のあり方A放射性廃棄物処分を含む核燃料サイクル政策の明確化B原子力産業のあり方−の三つの課題について審議しており、今回はその一つである燃料サイクルに関する項目での審議。

管理型処分法も新概念提示

提示された骨子案は「核燃料サイクル政策の基本的考え方」「核燃料サイクル事業の具体化」「放射性廃棄物の処理処分等の方向性」の3構成。

まず基本的考え方では、資源の乏しい我が国はエネルギー量の一定部分を安定的に確保することは重要だとし、中でも有限なウラン資源を有効に利用し、国内に存在するエネルギー資源と見なせる使用務み燃料のリサイクル(核燃料サイクル)を確立していくことの重要性を指摘するとともに、同サイクルは高度な技術の鎖であり、国内に一貫したサイクル技術を維持することは「テクノロジーセキュリティ」の観点からも必要だと強調している。

サイクル事業の具体的方針としては、ウラン濃縮はサイクルの自主性を確保する観点から国内で技術開発・事業化を継続的に推進していくことが重要で、今後は国際競争力のある経済性等に優れた遠心分離機の開発を行うことが必要不可欠としている。またプルサーマルは現時点でウラン資源を有効利用していく最も確実な方法であり、当面のウラン資源リサイクルの中核的な担い手として着実に推進していくことを明示している。軽水炉再処理は原子力を準国産エネルギーと位置づける重要な要素と述べ、六ヶ所再処理施設は2005年の竣工に向けた建設や使用済み燃料中間貯蔵の事業が順調に進めば「現段階においては海外再処理の選択の必要性は低い」との見解を示している。第2再処理工場の計画については2010年頃に検討を行うことが適当としている。

一方、放射性廃棄物処理処分の方向性に関しては、原子力委で検討されている処分法に沿って「地層処分を行う廃棄物」、「管理型処分を行う廃棄物」、「その他の廃棄物(ウラン廃棄物)」に区分して検討している。

「地層処分廃棄物」(仮称)は高レベル放射性廃棄物とTRU廃棄物(一部)を対象とし、適切な対応が必要としている。また高レベル廃棄物については、深地層の研究施設がこれまでの処分研究開発の成果を確認していく上で重要であるとともに、国民が実際に地下深部の環境を体験でき、処分研究開発への理解を深める場として社会的観点からも重要な施設だとしている。

「管理型処分廃棄物」(仮称)は処分の方法により、@不利用深度処分廃棄物(地下利用に十分余裕をもった深度(50〜100メートル)に人工構造物を設置し、数百年間管理する)Aコンクリートピット処分廃棄物B素掘り処分廃棄物C化学物質考慮処分廃棄物(素掘り処分の対象物のうち鉛などの有害な化学物質を含む)−(いずれも仮称)の四つに区分して対応するよう提案。そしてこれらの処分に当たっては合理性を追求する観点から、処分方法が同じ廃棄物はその発生源を問わず同一の処分場に処分することや、同一の処分場で複数の処分方法による処分を実施することも考えられるとしている。

今回の会合では、榎本聰明委員(東電常務取締役)が「日本のエネルギーセキュリティ確保のあり方」について報告した。榎本氏はエネセキュリティとは「エネ安定供給確保を目指した総含的リスク管理」であり、このリスク管理は「政府の主要任務」だと論じるとともに、こうした観点から原子力はエネ安定供給、資源供給源の多様化、備蓄、国の技術力・経済力の維持などに貢献することを説明。政府に対しては@既存原発の着実な運転管理Aエネルギー需給計画で原子力を含んだ適切な供給源割合を維持することB長期的観点から高度のリサイクル技術の研究開発の実施−などに取り組むよう求めた。


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