[原子力産業新聞] 2000年5月11日 第2037号 <2面>

[長期計画] 第5分科会、緊急医療にも言及

報告書骨子案も示す

国民生活に貢献する放射線利用のあり方とその推進方策について審議している原子力委員会・長期計画策定会議の第5分科会(座長・久保寺昭子東京理科大学薬学部教授、佐々木康人放射線医学総合研究所員)は、4月20日の第7回会合で報告書骨子案について審議した。

骨子案によると、報告書は7章で構成。放射線の基礎的知識、生活に密着した利用の実態、安全対策、今後の課題や世界唯一の被爆体験を踏まえたわが国の役割に至るまで、幅広くこれまでの議論の成果を盛り込んでいる。

「国民生活に貢献する放射線利用の拡がりと将来展望」と題する章では、生活への安心と社会への活力を与えるものとして、医学利用、食品照射、育種、工業・環境保全利用といった分野での、身近な、意外な所での放射線利用の実態を紹介。続く「安全と安心を確保するために」の章では、臨界事故を踏まえた緊急被曝医療にも触れる。「放射線利用の促進に向けた課題」の章では、@情報公開と共有A人材育成B研究環境の整備C法的規制の合理化E廃棄物処理・処分−についてそれぞれ問題点を掘り起こし、報告書の最後に提言を掲げる。

前回の会合で、座長は「長計全体の報告書としてまとめた場合に、同分科会の占める部分はさほど多くならないと見られるので、議論を何らかの形で世の中に出していくことが必要」と述べているが、この日まとめられた各委員からの提案としては、最近の疫学調査の結果を例示して、従来放射線は生体に対してマイナスの作用しかないと考えられ、職業被曝防護への莫大な費用や人々への不安等問題が生じていたが、一方でがん死亡率の低下やDNA損傷修復機能などの低線量照射のプラス効果もあるという見方が出された。

さらには、原子力学科を縮小する国立大学があることを踏まえて、原発立地地域にある大学へのより実学的な講座の新設を求める声もあがった。

議論が大詰めを迎えている長計の資料閲覧は、未来科学技術情報館、PR館「サイエンス・サテライト」、科学技術庁地方事務所の他、原子力委ホームページ http://sta-atm.jst.go.jp でも可能だ。


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