[原子力産業新聞] 2000年5月11日 第2037号 <5面>

[電事連] WWF報告に反論

原子力は温暖化防止に貢献

電気事業連合会は4月24日、世界自然保護基金(WWF、本部・スイス)が先頃まとめた、「発電による温室効果ガスの排出を効果的に削減するための戦略として、原子力発電を基本にすべきではない」と緒論づけた報告書について、「分析・検討した結果、誤解を招く内容がみられた」とする検討結果を発表した。

「気候変動と原子力発電」と題したこの報告書ほ、WWFが全世界にネットワークを持つ原子力反対組織である世界エネルギー情報サービス(WISE、本部・オランダ)に委託して作成したもので、報告書の著者はマイケル・シュナイダーWISEパリ所長。報告書は、@原子力発電はウラン濃縮において間接的に温室効果ガスを排出しているA電力と熱供給を合わせて考えると、CO2排出量は天然ガスコージェネレーションとそう変わらない−などとして、温暖化防止対策として原子力発電を否定している。

これに対して電事連では、WWF報告の中で引用されているグラフをみても、原子力発電からのCO2排出量は、ウラン濃縮などの間接的なエネルギー消費を含めても自然エネルギーとほぼ同等で、化石燃料を使用する発電システムと比較すると格段に低い水準となっていると指摘。「日本の電力会社では従来から各電源のCO2排出量を評価する際には、原料の採掘、建設、輸送、精製、運用、保守などライフサイクル全体で発生するCO2量をもとに判断している」とした上で、電力中央研究所の試算結果などを示し、原子力発電はCO2排出抑制の面で優れていると反論している。

また、報告書が電力と熱の双方を供給するコージェネレーションシステムと比較して、「原子力のCO2排出量は天然ガスコージェネレーション並み」と結論づけていることに対して、「原子力発電と石油による熱供給を組み合わせたシステムで比較を行っているが、仮に原子力と天然ガスを組み合わせたシステムなら、CO2排出量は、天然ガスコージェネレーションに比べ3割程度少なくなる」と指摘。実際にロシア、スロバキア、スイス、カナダなどでは、原子力のみで電力と熱を共に供給するシステムが存在しているとして、「この際のCO2排出量はバイオガスコージェネレーションと同等またはそれ以下の水準になる」との考えを示した。


Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。
Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM,INC. All rights Reserved.