[原子力産業新聞] 2000年5月18日 第2038号 <3面>

[OECD/NEA] プル管理2方法を比較

どちらでも放射線影響小さい

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は先月、使用済み燃料のMOX利用と直接処分の2種類の管理オプションが公衆に与える放射線影響についての技術調査報告書を公表し、「どちらの方法でも公衆の被曝線量は許容規制値より低く、大きな差はない」との結論に達したことを明らかにした。

この調査は核燃料サイクルに関する国際的な議論を一層オープンな形で展開させることや、NEA加盟各国が原子力開発や燃料サイクルについて政策決定する際の一助となることを目的に実施された。NEA加盟27か国による放射線防護委員会の専門家を含め、その他の国際機関や原子力産業界内外の機関に籍を置く18名の識者が、使用済み燃料の管理方法によって一般大衆と原子力作業従事者が受ける放射線影響にどれほどの違いが出るかを調査した。

比較したのは@使用済みウラン燃料をリサイクルし、分離抽出したプルトニウムをMOX利用したあと直接処分するという再処理オプションとA便用済み燃料の再処理は行わず直接処分するというワンス・スルー・オプション。結論として同報告書は、「どちらのオプションでも大衆および原子力作業従事者が受ける被曝線量は規制許容値を大幅に下回り、自然放射能による年間の平均被曝線量(2.4ミリシーベルト)と同程度に低いことから放射線影響は小さい」と指摘。また、両オプションからの放射線影響にはどちらが好ましいと議論できるほどの差異はないとの見解を示したもの。

今回の調査ではウラン採掘や燃料加工の各段階、発電など燃料サイクルのすべての部分の放射線影響を含めているほか、前提として次のような条件を設定していた。すなわち、@100万kW級のPWRにおけるシンプルな燃料サイクルAウラン鉱の採掘および粗精練後の廃棄材は長期的に安定な状態で維持B凝縮後の劣化ウランおよび再処理後に分離したウランは再使用しないC再処理オプションにおいてはすべての使用済み酸化ウランを再処理し、再処理後に抽出したすべてのプルトニウムはMOX燃料として1回だけリサイクルDガラス固化体や使用済みMOX燃料を含むすべての廃棄物は処分場に処分する−など。


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