[原子力産業新聞] 2000年5月18日 第2038号 <6面>

[NEI-insight] NRC、安全性に直結した客観的手法

「しきい値」で実績評価へ

原子力発電所を規制しているNRCはかつてないほど安全に焦点をあてた客観的な新しい監督手続きの採用を開始することになっている。

新しい手続きには、30年に及ぶ原子力発電所の運転経験や安全調査から得られた知見に基づいた客観的な運転実績に関するしきい値が含まれている。年に4回、原子力発電所の実績を評価していた以前の手続きには18か月から24か月のタイムラグがあったが、新しい手続きはきわめてタイムリーなものである。またNRCは、この手続きが判断しやすく、しかも一般の人たちにも利用しやすくわかりやすいようになることを期待している。

NRCは1年間にわたる開発段階を経て、昨年の6月から11月にかけて新しい監督手続きの試運用を行った。8か所の原子力発電所サイトの全部で13基のユニットがこの試験に参加した。

NRCや産業界、そして関係団体は、この試運用プロジェクトのあとワークショップを開き、試運用から得られた教訓について議論した。このワークショップでは、原子力発電所でこの新しい手続きを効果的に運用するための要点が明らかにされた。具体的には、管理面でのリーダーシップや企業だけでなく地域を含めた幅広い参加、正確なデータの収集と文書化などについてである。

米原子力エネルギー協会(NEI)の規制改革担当理事であるスティーブ・フロイドはNRCのワークショップの場で、「新しい手続きの約90%は問題ない」とした上で「新しい監督手続きの構成や手法は、全体的に規制手続きの客観性や整合性、そして安全に焦点を定めるという点からみて改善されている」と指摘している。

一方でフロイドは、運転実績データや適切な実績指標が正確であることが保証されるようにすることなど、それほど多くはないがいくつかの問題点に取り組む必要があるとしながらも、新しい手続きが完全に実施できるものと確信している。試験プロジェクトの参加者からの意見によると、新しい手続きはさらに安全に焦点をあてたものに改善されている。

新しい監督手続きでは、発電所の安全と放射線安全、保安の三つの分野について発電所の運転実績を判断するために約20の指標を採用。各指標における運転実績は、四半期ごとに判定され、四つに色分けされたグループのどれかに入ることになる。

緑=期待された標準内に運転実績が収まっている。

白=運転実績は良好だが、ある特定の分野でやや低下している。NRCとしては、矯正的な活動の監督を強化することになる。

黄=運転実績がさらに低下。運転を継続することは差し支えないが、NRCとしては、電力会社に対し矯正的な活動を指示することになる。

赤=運転実績が容認できない。問題が処理されたとNRCが認めるまで、発電所の運転が中止される。

各発電所に常駐しているNRCの検査官は、電力会社がデータを適切に報告しているかどうかを判断するため、定点検査を実施することになる。NRCは、運転実績指標の採用に加えて、各発電所で検査を実施することになる。各指標の色分けされた結果は、主な検査結果とともに、NRCのインターネット・ホームページに四半期ごとに掲載される。これは、一般の人がいろいろなレベルの情報を入手できるようにすることを意図したものである。

こうした色分けは発電所の運転実績を簡単に見分けられるようにしたものであるが、それが一般の人たちの信頼に資するものであるかどうかという疑問がある。

ニュージャージー州の放射線安全局長のジル・リポティは、「色によって人為的なしきい値がもたらされる」とした上で、「どこにあれば、一般の人たちから信頼されないかということが一目瞭然となる」と述べた。しかし、試験プロジェクトに参加した発電所のほとんどの運転実績指標が緑で、高い運転実績を示したという事実に懸念を示した。フロイドは、発電所の運転実績は、重大な事象もなく傑出したものであったと指摘。「色分けは、それだけとってみれぱ、一般の人たちに発電所の安全性の断片を示すに過ぎないが、莫大なデータをまとめたものである」と説明した。また、「手続きがオープンになればなるほど、発電所の所有者に誤りを正す必要があることはそうしなけれぱならないという気にさせる。これは良いことである」と語っている。


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