[原子力産業新聞] 2000年5月25日 第2039号 <1面>

[環境庁] CO2削減で炭素税導入の影響試算

施策組み合わせで1,500円/トンに

環境庁の「環境政策における経済的手法検討会」(座長・石弘光一橋大学学長)は18日、炭素税の導入によるCO2排出削減効果と経済への影響などを分析した報告書をまとめた。CO2排出量を2010年時点で90年レベルと比較して2%削減する場合、炭素税の導入だけでは1トン当たり約3〜4万円の炭素税が必要となるが、排出量取引や省エネルギー投資への補助金など施策との組み合わせにより、1,500円程度にまで抑えられると試算している。

報告書は、地球温暖化防止のための税に焦点を当て、わが国においてCO2排出量を削減するために必要な税額等についてシミュレーションを行い、税を含めたポリシーミックスの有効性を示した。シミュレーションでは、炭素税と国際排出量取引または補助金との組み合わせを具体例として取り上げ、その効果と経済への影響について検討を行うとともに、炭素税の税収の還流方策によって経済への影響が異なるとして、税収の還流方策に着目した比較分析も行った。

京都議定書では、2008年から2012年までに温室効果ガスの排出量を90年比で6%削減することが、わが国の目標として示されているが、今回のシミュレーションではCO2以外のガスやCO2の吸収源についてはモデルの対象としていない為、2%削減を前提として試算した。その結果、目標達成のためには炭素1トン当たり約3〜4万円の炭素税の導入が必要となり、これはガソリン1リットル当たり約20円〜26円に相当するという。これを必要削減量の25%海外排出枠購入(1,500万トンC/年)を上限として排出枠を炭素トン当たり1万円で購入した場合、必要な炭素税は約2万6,500円になるとしている。一方、炭素税の税収を民間における省エネ投資への補助金に導入した場合、炭素トン当たりの税額は3,000円程度。さらに税収を排出枠購入で補うために税収を排出枠に投入した場合、同1,500円〜2,000円程度で十分に目標が達成でき、これはガソリン1リットル当たり0.6円〜1.3円に相当するという。これらの試算から報告書では、「税収の戦略的な還流方法も考慮することで高い効果が得られ、環境保全の新しい形の経済へ誘導を図ることもできる」と指摘している。

欧州では、地球温暖化対策のための導入が広がっており、2010年には欧州主要国のほとんどが導入される見込みで、またアメリカやカナダでも排出量取引を主体とする政策が進展しようとしている。報告書は、国際競争力の観点からも、わが国においても効率的かつ新しい型の経済を戦略的に作っていける政策を持つことが急務となっていると指摘。「規制や自主的な取り組みに加え、税や排出量取引のような経済的手法を含めて、政策パッケージ全体の検討の具体化を図る段階に至った」と提言している。


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