[原子力産業新聞] 2000年5月25日 第2039号 <5面>

[緊急被曝医療センター] 通常時はガン治療施設に

放医研・河内氏、原子力総合シンポで提案

 日本原子力学会を始めとする41学協会は、共催で11〜12日、東京・千代田区の内幸町ホールで、「原子力総合シンポジウム」を開催した。38回目の開催となる今回は、昨年9月のJCO臨界事故の反省を踏まえ、「21世紀における人類・社会の直面する諸問題と原子力の新たな取り組み−臨界事故の反省と未来への展望」を主調テーマに、各種講演、パネルディスカッションなどが行われた。

 初日午後には「21世紀に生きる」と題して各種講演およびパネルが行われたが、その中の「地域と共生する研究センター」では、若狭湾エネルギー研究センターの清水彰直氏が同センターを紹介した。同氏はセンターの設立経緯、施設の概要、研究内容などを述べた後、センターの職員規模に着及。「2000年2月現在で常勤職員数(常勤役員および非常勤客員研究員含む)は43人であり、国の研究機関に比べて非常に小さい。このような小規模で研究成果を挙げるには、特色のある研究を重点的に実施するか、内外の研究機関と連携する事が必要だ」として、研究者の能力を100%発揮出来る環境の重要さを強調し、原子力関連学会会員に理解と支援を求めた。

 また「地域医療センターの新たな展開」と題して講演した放射線医学総合研究所の河内清光氏は、「緊急被曝医療センターは、原子力施設サイトよりもオフサイトの方が、実際の緊急時にも機能しやすいと考える」ことから、近隣の中核都市において通常はガン治療施設として機能し、緊急時に被曝医療センターとして活動できる施設こそ地域の期待に応えられる新しい型の医療センターとして展開できるのではないかとして、「粒子線治療施設はガン克服に極めて有用な施設であることから、国民に放射線の有効性を理解してもらうのに格好の例であり、同時にこの施設が緊急時には被曝医療センターとして機能するとすれば、原子力施設のある地域住民に対しても、ガン治療への期待感と緊急時に対する安心感を与えてくれることになるだろう」と述べ、将来の施設のひとつの目標を示した。

 翌12日には、臨界事故の反省および今後の技術開発への取り組みをメインにした、各種講演が行われた。


Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。
Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM,INC. All rights Reserved.