[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <1面>

[長期計画] 第2分科会報告書まとめ

「基幹電源」と位置付け

 原子力委員会・長期計画策定会議の第2分科会は1日、第10回会合を開き、「エネルギーとしての原子力利用」と題する同分科会報告書を取りまとめた。

 報告書の構成は5章立て。第1章から2章にかけて、エネルギーとしての原子力利用の現状、21世紀のエネルギー問題、省エネや新エネルギーへの期待と課題、エネルギーとしての原子力の位置づけなどを論じ、第3章で原子力エネルギー利用の具体的展開の基本的考えを示し、第4章で具体的な軽水炉・サイクルのあり方、原子力供給産業、人材確保、技術の継承・発展について述べ、最後の第5章で放射性廃棄物の処理処分のあり方について方策を示している。

 今同一つの焦点となっていた第2章の「エネルギーとしての原子力利用の位置づけ」では、まず今後の課題として@主要なエネルギー源について国際交易ネットワークの多様化を図り、供給途絶に対応した水準の備蓄を図るA省エネ努力等の推進と再生可能エネルギー利用の増大B省エネ、原子力、再生可能エネルギーの技術開発の推進Cこうした目標のため、国は備蓄制度、研究開発活動、民間がこれらの課題を達成する方向性と整合する投資活動を行うよう誘導する政策を推進する−などを指摘している。

 また原子力エネルギーの位置づけでは、原子力の特性として安定供給性に優れ、FBRが実用化されれば千年を超える人類のエネルギー需要を満たす可能性を有するばかりでなく、地球温暖化防止という地球規模の環境問題に関する制約を満たしつつエネルギー供給を確保することができるとして、「引き続き基幹電源に位置づけ、21世紀にふさわしい循環型社会の実現に向けて最大限に活用していくことが合理的だ」との考えを明示した。もう一つの焦点となった「自由化時代の原子力開発利用」のあり方では、エネルギーとしての原子力利用が期待される役割を果たしていくためには、国は施設の運転管理が適切に行われていることを保安検査を通じて適宜に監査し、欠陥等が見いだされた場合には早期に是正措置を求めていくことが大切だとしている。

 さらに国は、長期的観点からエネルギーの安定供給の確保や環境問題に係わる国際約束を遵守するために必要な対応方針を明確にし、その方針の下における民間の自主的な投資活動に伴う原子力発電や再生可能エネルギーの規模が目標を達成するように、状況に応じて誘導する責務があるとしており、その誘導方策として@事業許可基準規制や量を規制する統制型の直接規制A課税、補助金、排出権市場などの市場型の経済手段−など新しい市場条件下における合理的な手段を選択し実施すべきだと述べている。

 さらに電気事業者が将来、原子力発電が合理的な選択肢の一つになるようその高度化や革新を目指す研究開発を実施し、その成果が他のエネルギー供給技術と競争していくことができる可能性があるかどうかを検討し、意欲ある民間事業者がその実用化の活動を行えるよう情報提供を行い、適切な誘導を行うことも国に求められるとしている。


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