[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <2面>

[エネ調総合部会] 有識者からの意見を聴取

核の平和利用、理念とスタンス確立を

 総合エネルギー調査会の総合部会(部会長・茅陽一東大名誉教授)は2日、第2回会合を東京・千代田区の通産省会議室で開催し、今後のエネルギー政策の見直しに向けて、有識者からの意見聴取を行った。

 今回意見発表を行ったのは、三井物産戦略研究所の寺島実郎所長、東大空間情報科学研究センターの八田達夫教授、全国原子力発電所所在地市町村協議会会長の河瀬一治敦賀市長の3名。このうち「日本のエネルギーセキュリティに関わる国際的・地政学的動向」を発表した寺島氏は、「国際エネルギーの世界はエゴと悪意に満ちた綱引きだ」と、エネルギーをめぐる各国間に横たわる問題は、きれい事では済まされないと強調した上で、国家安全保障の中核として原子力平和利用を位置づけるよう提案。「『独・米が原子力開発利用に腰が引けているから日本も』というのはむしろ逆てあり、不用意な核武装論が台頭しないためにも、核の平和利用についての日本の理念とスタンスを確立しておく必要がある」「日本が核平和主義を貫き、軽武装経済国家として21世紀を生きるためにも、逆説的ではあるが、原子力の平和利用技術における蓄積を重視すべき」と強く訴えた。また同氏は、日本がエネルギー戦略で世界へ貢献していくことの重要性として、原子力安全に関わる「和製デファクト・スタンダード」の主導性を確立することが重要との認識を示した。

 一方、原子力開発に対して批判的な人々へ向けて同氏は、原子力は等身大の技術ではないことは確かだが、「文明化」した生活の中では、ジェット旅客機や超高層ビルなど生身の人間では制御不可能な技術に取り囲まれていることも事実であり、「現代人はきれい事を超えて、それらのシステムに身を任せて便益を得ていることによる『覚悟』が問われる。その覚悟を前提とする最善の制御が求められる」と述べ、結論として省エネ、新エネでエネルギー消費の5%程度を賄うことを前提として、一時エネルギー供給ベースで石油・石炭への依存度を下げ、天然ガスへの依存度を上げるとともに、原子力依存度を現状の15%程度を維持する目標値を掲げた。

 また全原協会長をつとめる河瀬敦賀市長は、「わが国初の商業用原子力発電所を立地した当市が、原子力発電所とともに発展していくモデルになれれば、今後の立地問題にプラスになるのではないか」と、電源三法制度の見直しや原子力立地地域振興特別措置法の制定など、立地地域の長期的な発展に寄与する地域振興策の策定を強く訴えた。次回会合は23日。引続き有識者からの意見聴取が行われる予定だ。


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