[原子力産業新聞] 2000年6月8日 第2041号 <5面>

[原研] 超伝導状態で13テスラを達成

ソレノイドコイルに4.6万A流す

 日本原子力研究所は国際熱核融合実験炉(ITER)の中核的装置となる大型超伝導コイルについて、その原型コイルの国際共同実験を那珂研で進めてきたが、4月19日に直流動作性能として、同コイルに電流値4万6,000アンペア(ITERレベルの115%相当)を流して、第一の目標である超伝導状態での磁場13テスラを達成することに成功したことを、このほど明らかにした。

 ITERの工学設計活動では、中心ソレノイドコイルの原型コイル(大きさはほぼ実機規模)を国際協力で設計製作し、同プロジェクトを終始主導してきた那珂研で組み立て、本年3月から性能実験を続けてきた。今回の成果は、ITER建設に必要な超伝導性能のうち直流性能を達成したもの。

 トカマク型核融合実験炉ITERでは、プラズマの閉じ込めと加熱のために、トランスの原理を用いて、ドーナツ型プラズマ中に電流を誘起することが必要だ。この役割を担うのが中心ソレノイドコイルで、ITERに使用される超伝導コイルの中で最も強い磁場(13テスラ)を発生し、かつ急速に磁場を発生させる必要がある。従って、同コイルの技術の成否がITER実現性を左右するとみられていた。

 ITER超伝導コイルの技術的要求は、これまでに開発された超伝導コイルの技術水準をはるかに越えるものだったが、今回の実験成功により、ITER超伝導マグネットに 関する工学設計の妥当性とともに、ITER用大型超伝導コイルの製作技術と超伝導性能を確認でき、ITER建設へ向けて大きな技術的前進を得た。今後、ITERでの運転動作を模擬するために、磁場を急速に変化させる運転を行い、パルス動作での本コイルの目標性能を確認する予定だ。


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