[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <3面>

[ウクライナ] チェルノブイリ原発、12月15日付けで永久閉鎖

米、積極的な財政支援約束

 ウクライナのクチマ大統領は5日、キエフを訪問した米国のクリントン大統領と会談した後、「チェルノブイリ発電所の残った1基を今年の12月15日付で永久に閉鎖する」と発表した。

 同発電所では3号機(100万kW、RBMK)だけが運転可能なまま残っていたが、この閉鎖日程については1週間ほど前、「チェルノブイリ問題総合解決省庁間委員会」の議長であるユシチェンコ首相が正式に決定していることを認めるとともに、近日中に大統領から発表されることも示唆していた。記者会見の席でクチマ大統領は、「この決断はウクライナにとって生易しいものではなかったが、原子力安全に関する専門家のアドバイスや95年に西側諸国と結んだ了解覚書(MOU)での公約を考慮して判断した」と説明した。

 クリントン米大統領はウクライナの決定を歓迎し、「世界環境デーとも言える記念すべき日になる」と評価。閉鎖に伴う問題解決のために先進7カ国(G7)がウクライナを支援するよう全力で働きかけるつもりだと明言した。特に4号機を覆う石棺の補修計画に対し、米国は7,800万ドル(84億円)を追加支援するとともに、同国の原子力発電所の安全性改善のためにも200万ドル(2億円)を拠出するとの意向を明らかにしている。

 ただし、かねてよりウクライナがチェルノブイリ発電所閉鎖の条件に主張していたフメルニツキ2号機およびロブノ4号機の建設資金援助についてはクリントン大統領は何も言及していない。この計画(K2/R4)への資金確保に関して欧州復興開発銀行(FBRD)は今年初頭、@チェルノブイリ発電所の年内の閉鎖A銀行を通じた新規投資の確約−を条件として提示していた。

 なお、米国政府はこのほか、ウクライナ国内の原子力発電所に経済的で安定した燃料供給を支援するための協定(UNFP)を同国政府との間で締結した。調印は米国エネルギー省(DOE)のリチャードソン長官とウクライナ燃料エネルギー省のツルブ大臣の間で執り行われた。

 ウクライナ政府の報道官によると、この取決めにより国内の100万kW級VVERの安全性を向上させ、燃料の多様化を図る技術協力の枠組みが整備されることになる。具体的には米国が3,000万ドル(32億円)程度の予算で機器や技術、プロジェクト管理等で支援して行く予定。すでにウエスチングハウス社が米国側の主契約会社として選抜されており、サウスウクライナ原子力発電所に同社製の燃料を試験的に装荷することが計画されている。


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