[原子力産業新聞] 2000年6月15日 第2042号 <3面>

[OECD/NEA] 事故の教訓まとめた報告書を公表

「経験のフィードバック重要」

 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)は5月24日、国際原子力機関(IAEA)と共同で96年から99年の間に世界の原子力発電所で発生した事故その他の経験を分析し、得られた教訓をまとめた新しい報告書を公表した。

 この報告書は非技術系の読者を対象としたもので、300件以上の事象とそれに附随する教訓を分析した結果、次のような発電所の安全性向上に資する現実的な事態がもたらされたと強調している。すなわち、@新しい様々な現象が認知されたA安全に関する一般的な情報をNEAおよびIAEAの全加盟国に伝えることができたB間違いを修正するとともに潜在的に安全性に係る事象の前兆や根本原因を洗い出すことができ、関連情報も原子力安全関係者達に流布することができた。

 とりわけ安全性や公衆の健康に影響が及ぶ産業では、現場で起こった事象の報告はその操業と規制上、ますます重要度が高まっているとNEAは指摘。航空、化学、医療品、爆発物などの産業においても安全に関する教訓はすべて操業経験のフィードバックによってもたらされている点に注意を喚起した。

 例えば、原子力発電所で深刻な事故や事象が発生する際、それを警告する前兆が警報の形で必ず現れるものだが、これは75年に米国で起きたスリーマイルアイランド原子力発電所事故で得られた教訓の一つだ。この教訓からNEAは80年、各国の原子力機関が系統的に情報交換したり、原子力発電所の事象から結論を導き出すことを可能にする「事故報告システム(IRS)」を創設するに至った。IRSはその後、実質的にNEA加盟国以外の国にも拡大適用され、現在はNEAとIAEAが共同で運営中。IRSの枠組みで行われている情報交換が原子力発電所における高いレベルの安全性維持と深刻な事故の発生予防に大いに役立っていることは今や一般的な認識になったと強調している。


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