[原子力産業新聞] 2000年6月29日 第2044号 <4面>

[原研] ITER用真空容器、製作に見通し

遠隔溶接技術開発

 日本原子力研究所は国際熱核融合実験炉(ITER)用大型真空容器の技術開発を国際協力のもとで進めてきたが、このほど日本が製作した実寸大容器モデルにロシア製のポート延長部を米製の遠隔ロボットで溶接し、溶接変形に関するデータを取得、実機製作の技術的見通しを得た。

 日本製の容器モデルは高さ15m、幅9m、断面がD字型のステンレス製。ロシア製のポート延長部は高さ3m、幅2m、断面が長方形のステンレス製の筒状構造体。一方、米開発のロボットは全長約1mの多関節アームに溶接機を搭載しており、軌道と対象物間に多自由度をもたせている。作業は、運転後の分解・再組み立てに対応できる遠隔溶接の実証も兼ねており、設計通りの性能が確認された。

 ITER真空容器は高さが15mあるが、その要求製作精度はプラスマイナス5mmと厳しい。このため容器を真空で組み立てるには、変形量を正確に予測する必要があるが、断面がD字型で複雑な形状をしている容器の変形量は、モデル計算による予測が困難。そこで製作精度の実証が目的の実立大モデルを用いた試験で溶接変形に関するデータを取得した。その結果、ポート延長部の溶接では本体、延長部とも断面の変形はなく、ポート長さ方向に5mm程度縮むのみであることが判明。これにより、ポート延長部の製作長さを適切に設定し、要求精度で製作可能である見通しが得られた。

 原研は今後、この遠隔溶接ロボットを用いた非破壊検査、切断作業の試験を継続する予定。


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