[原子力産業新聞] 2000年7月13日 第2046号 <1面>

[MOX燃料] 英国返還で合意

費用はBNFLが負担

 関西電力の高浜発電所3・4号機(各PWR、87万kW)で使用が予定されていた英国原子燃料会社(BNFL)製ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の一部データに不正があった問題で、政府は11日、同発電所に搬入済みの4号機用のMOX燃料8体を英国側に返却することで英国政府と合意した。アナ・ウォーカー英国貿易産業省エネルギー総局長ら英国政府代表団と河野博文資源エネルギー庁長官らとの会談で確認されたもので、今回の合意により関係各局は今後、米国および輸送沿岸諸国との輸送時の護衛ほか様々な問題に関する協議を開始する。なお返還は2〜3年以内に実現する見通しだ。

 ウォーカー総局長は2月にエネ庁を訪問した際に、BNFLによるMOX燃料データ不正により生じた様々な困難について心からの遺憾の意を表朗。また問題解決に向けて、燃料返還も含めたあらゆるオプションについて検討することを確約していた。これに対してわが国は、一貫して英国側の燃料「持ち帰り」を主張。またこの会談を受けて当事者である関電とBNFLも、問題解決に向けて交渉を重ねていた。

 河野長官と藤冨エネ庁審議官ら日本側と、英国側代表団との会談は11日午前から開始された。冒頭の挨拶で河野長官は、ウォーカー氏らの努力に感謝の意を表するとともに、今回のデータ不正問題について「立地地域住民を始めとする国民に対して、原子力の信頼を揺るがしかねない大きな問題だ」と、事の重大さについての認識をあらためて英国側に伝えた。

 また同長官は、両国間の懸案となっているMOX燃料返還問題について「原子力推進には安全はもとより、信頼も大切な問題だ。こうした観点から(わが国は)返還を求めてきた」と述べるとともに、加えて「(返還は)問題処理のためだけに求めているものではない。日英両国間には、長く続いた原子力協力に関する濃厚な関係がある」と、返還は今後の良好な日英協力関係の継続に不可欠との認識を表明し、「長年にわたる関係に照らして、望ましい解決が図れることを期待する」と、英国側に対して重ねてMOX燃料の引き取りを求めた。

 これに対してウォーカー氏は「今後も濃厚な関係を続けていきたいと思っている」と述べ、日本側の要求に応じる姿勢を見せた。

 その後の会談で両者は@英国側は「MOX燃料供給者として燃料を戻す」とのBNFLの決定を受け入れることを確認A両国は関係国との協議および必要な準備を取り進めて行くとの共通の結論に達し、また返還輸送の実施にあたっては、必要な核物質防護上の措置が取られることおよび、輸送沿岸国との関係が最大限配慮されることを確認B返還輸送は2〜3年以内に実現されるとの見通しC返還輸送の費用はBNFLが負担−などで合意に至った。

 一方、関電側は政府間合意を受け、BNFLと@BNFLの責任でMOX燃料を返送するA関電に対してBNFLは、総額約64億円の補償を支払う−ことで、同日合意した。なお1月17日より関電は、BNFLをMOX燃料加工契約ならびに再処理契約を指名停止としていたが、返送・補償問題が合意を見たことに加えてBNFLにおける再発防止対策の取り組みに進捗が見られたことから、11日を持って指名停止を解除した。


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