[原子力産業新聞] 2000年7月13日 第2046号 <1面>

[原子力安全白書] 安全確保体制再構築へ

臨界事故教訓に

 原子力安全委員会の1999年版原子力安全白書が7日、閣議に提出、了承された。

 今回は我が国の原子力開発史上最悪の事故となったJCO臨界事故を中心とする数件の事故の原因や対応などを記述し、重大事故再発に向け安全委としての決意を示した第一編「原子力安全の再構築に向けて」と、昨年から今年3月までの行政庁らの安全確保の現状を紹介した第二編「原子力の要全確保の現状」そして「資料編」から構成。

 白書は昨今の一連の事故や不祥事はセイフティカルチャー(安全文化)の欠如に原因があるとし、こうした事態に対応していくため、信頼される安全規制の追求、整合性のとれた原子力安全システムの構築など実施し、原子力安全確保体制の整備強化に向け、安全委として「決意を新たにして今後の役割と責任を果していくことに全力を傾ける」との姿勢を示している。

 JCO事故について、その直接的原因はセイフティカルチャーの欠如を背景として、事業者がルールを守らなかったことにあるとしながらも、国も JCO 転換試験棟の安全管理の実態を十分把握できていなかったとして、許認可・安全規制上の問題点も指摘している。

 その上で、原子炉等規制法改正や災害対策特別措置法制定、安全委の事務局機能強化、「NSネット」設立といった産業界の取り組み、情報公開、防災訓練など、原子力安全確保体制の強化、「安全」と「安心」の再構築に向けた努力が図られつつあることを紹介。

 その中で、情報公開については国民が必要な情報を適時的確に伝え、それを共有していく環境作りには報道の役割が大きいと指摘するとともに、安全委でも情報公開施策としては、(1) 本会議や部会の審議の公開(2) インターネットでの会議資料の公開 (3) 「原子力安全意見・質問箱」の設置 (4) 「地方原子力安全委員会」の開催D国際機関への事故の正確な情報発信−を一層維進していく考えを述べている。また、防災訓練を通じ防災対策が実効性を上げていくことを期待し、安全委も積極的に参画しその体制強化に一層努めていく考えを示している。JCO 事故を振リ返って、「従前の考え方と活動では、安全委員会の包括的責任が十全には果たし切れなかったことを深く反省し、国民の信頼に応えられなかった」として、重い責任を認識し、今後は (1) 国民の期待に応える主体的な活動 (2) 強化された体制・機能を活かした活動 (3) 国民から信頼される安全規制の追求 (4) 整合性のとれたよりわかりやすい原子力安全システムの構築 (5) 国民との双方向の意志疎通−を基本的な視点として動くことを決意。それらを踏まえ、安全指針類の整備、安全目標の策定についての検討、自己点検など具体化していく。またこのような事故を二度と起こさぬよう、安全委として「今後とも原子力の安全確保に全力を尽くす」との決意を新たにしている。


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