[原子力産業新聞] 2000年7月13日 第2046号 <2面>

[温室効果ガス] 環境庁、国内取引制度を検討

キャップ&トレード方式

 環境庁はこのほど、温室効果ガスを削減する経済的手法として関心が高まっている「国内排出量取引制度に関する報告書」をまとめた。

 京都議定書による国際的な排出量取引は2008年以降に開始されるが、国内での政策・措置としての国内排出量取引制度は2007年以前であっても導入が可能。このため、早期に制度を開始することによる温室効果ガス排出量の早期削減の推進や、国内取引で得られた経験の有効活用の観点から、既にデンマークや英国、ノルウェーなど諸外国では国内制度が設計され、具体的な提案が行われている。同報告書はこれらの状況を踏まえ、環境庁が国内排出量取引の具体的なイメージや特徴を明らかにするため、野村総合研究所に委託してまとめたもので、排出枠が設定された事業者間で排出枠の一部移転、獲得を認める「キャップ・アンド・トレード方式」を中心に様々な観点から検討し、具体的なオプションと制度例の提示を行った。環境庁では今後、中央環境審議会の議論も踏まえ、国内制度整備の検討を進める。

 今回取り上げられたキャップ・アンド・トレード方式は、温室効果ガスの排出総量に一定の制限を設けることができる上、市場メカニズムを活用できる排出枠取引制度として、欧米でも検討が進められている。報告書では、対象ガスの種類、吸収源活動、交付対象主体、排出枠の交付方法や取引方法などで様々なパターンが考えられるとした上で、 CO2 を対象ガスとした場合の交付対象主体のオプションについて、化石燃料を生産・輸入・販売する事業者などの上流部門にオークションで排出枠を交付する「上流交付、オークション型」のほか、「ハイブリッド交付・グランドファザリング型」、「下流一部交付・グランドファザリング型」の3ケースを例示。対象主体数から見ると「下流一部交付・グランドファザリング型」が広範囲を対象にできるが、カバー範囲 (97年度の我が国における温室効果ガス排出量全体に占める比率) については他の2例が83%なのに対し、50〜60%と低減するとしている。報告書ではこのほか、取引方法やバンキング、2008年以降の国際的な排出量取引との関係などについても検討を行っている。


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