[原子力産業新聞] 2000年7月13日 第2046号 <4面>

[富士電機] ICプラズマ技術を開発

放射性廃樹脂20分の1に減容

 富士電機は、原子力発電所で発生する放射性廃樹脂の体積を20分の1以下に減容でき、排ガスへの放射性核種の移行率も極めて低く抑えられる減容システムの実用化に成功。実規模装置を製品化し販売を開始した。

 ICプラズマ(高周波誘導結合プラズマ)によるこの廃樹脂減容システムは、廃樹脂を減圧酸素プラズマ雰囲気中で水と炭酸ガスに酸化分解し、灰化・減容する。廃樹脂に吸著されているコバルト60などの放射性金属イオンは、処理後の残さ中に閉じ込められ、排ガスへの移行率も極めて小さく抑えられるのが特徴。完全な酸化・分解反応のためすすやタールの発生がなく、溶媒等も不要で、排ガス量および二次廃棄物の発生を低減できるなど、環境に配慮した減容処理技術としても注目される。

 同システムはまた、排ガス処理系もコンパクトでシンプルな構成になっている。処理処分総コストの低減にも貢献できるという。

 原子力発電所の水浄化系から放射性廃棄物として発生する廃樹脂は、BWRで年間約20立方メートル、PWRで同5立方メートルにのぼり、この内、低線量の廃樹脂は燃焼・減容してセメント固化等により施設内貯蔵または処分などが行われるようになってきた。一方、高線量のものに関しては、現在、熱分解や液相酸化分解など各種の処理技術の開発が進められているが、排ガス量や設備コストなどの課題があり実用化には至っていない。同社はICプラズマによる技術開発に取り組んできたが、このほど実規模処置装置の実用化に成功したもの。同装置で乾燥処理した廃樹脂4リツトルを1時間当たり約2リットルの速度での処理する能力を確認した。年間20立法メートルの廃樹脂の自動化処理が可能という。

 同社では、川崎にあるエネルギー製作所に設置した実規模処置装置による公開実験などを通じて電力各社や原子力関連施設を対象に売り込みを図っていく。


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