[原子力産業新聞] 2000年7月13日 第2046号 <4面>

[理化学研] 魔法数「16」を新発見

50年間の定説覆す

 原子核が安定な元素は人類の存在にとって大切なもので、特に陽子と中性子の数が同数で、それぞれ2,8,20,28,50,82、126の場合は原子核は特に安定となり、この数を「魔法数」(マジックナンバー)と呼んでいる。2はヘリウム、8は酸素などがそうだ。1949年以来、原子核の魔法数は「陽子と中性子の混合比が変わっても動かない」と考えられていたが、理化学研究所・RIビーム科学研究室の小沢顕研究員と谷畑勇夫主任研究員らは、このほど新しい魔法数「16」を発見した。

 理研ではRIビームを用い、窒素や酸素、フッ素などの不安定同位体の核半径を測定した結果、核半径が中性子数「15」「16」の原子核で異常に大きくなることを突き止めた。また同時にこれらの原子核の安定度の指標となる中性子分離エネルギーを解析したところ、陽子に比べて中性子が非常に多い、いわゆる中性子過剰な場合にのみ、中性子数「16」で特に安定であることを確認した。一般的に中性子過剰になるにつれて、不安定核の寿命は短くなるが、魔法数では、その寿命が長く(安定)になる。

 こうした発見は、変化しないと考えられていた魔法数が中性子過剰核では違う数に変わってしまうことを証明したことになり、理研では今後は、より重い元素で魔法数がどのように変化しているかを建設中の「RIビームファクトリー」によって解明したいとしている。


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