[原子力産業新聞] 2000年7月20日 第2047号 <3面>

[フランス] ダンピエール原発、手順書の誤りで安全系が停止

 フランスのダンピエール原子力発電所(各93万7,000kW、PWR4基)2号機で先月の運転停止期間中に安全注入系(SIS)が7時間にわたって起動不能になった事象で、原因は誤った手順書にあったことが判明し、仏電力公社(EDF)と安全規制当局(ASN)は4日、同事象が国際原子力事象尺度(INES)でレベル2に相当すると発表した。

 原子炉の通常運転の手順書では一次系の圧力が5バール以下になった場合、SISの弁を直ちに閉じるよう明記されている。しかし、ダンピエール発電所ではトリカスタン原子力発電所の手順書をそのままコピーした手順書に従って、それよりも数時間早いタイミングで弁を閉鎖。それが今回のトラブルを引き起こしたとしている。この手順は99年2月以降すでに5回、同発電所で取られており、その際は何のトラブルも探知されなかった。また、同じ手順書を採用しているトリカスタン発電所とビュジェイ発電所でも同様の手順がそれぞれ10回および6回取られていたことが判明している。

 レベル2の評定は多重防護の概念と安全文化が損なわれたことを受けて下された。安全注入系が一時的に自動的に起動しなくなったことは原子炉の通常運転に直接影響するものではないが、ASNはEDFが運転手順書を発電所ごとに厳密に調整していなかった点を指摘した。

 ただしASNは声明の中で、安全性全体で見ればダンピエールの事象は非常に小さい点にも言及している。緊急時にSISが自動的に起動しなくても運転員が手動で弁を開けることができ、一次冷却水が喪失された場合には弁を開くよう緊急運転手順書に明記されていると述べた。


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