[原子力産業新聞] 2000年7月27日 第2048号 <4面>

[原研] JT-60、世界最高水準の効率達成

プラズマ電流、従来の3倍に

日本原子力研究所は18日、那珂研究所の臨界プラズマ試験装置 (JT-60) で、従来の3倍の効率に相当するプラズマ電流の発生に成功したことを明らかにした。

負イオン入射装置と高周波加熱の二つの装置を採用することでプラズマ電流の効率を高めることに成功し、世界最高の水準を達成したもの。

国際熱核融合実験炉 (ITER) でのプラズマ加熱と同方式を採用することで、ITER に必要な高い電流発生効率を実現する目処を得たことになる。

核融合炉は、ドーナツ状の磁場のなかに高密度のプラズマ電流を発生させ、それを加熱して維持しつつ高い効率を保持することが、連続運転への欠かせない条件でおり、ちょうどエンジンの燃費を向上させるのと同様に経済性の向上につながる。

効率をあげるためには、粒子ビームを入射してエネルギー (粒子の速度) を高めると同時に、電流の温度を高めるという二つの技術要素をうまく組み合わせることが必要で、粒子ビームの加速にあたっては、従来から原研が取り組んできた負イオン方式によるビーム入射装置を採用。加熱には電子レンジと同じ原理を使った高周波入射装置を導入した。

このうち負イオン方式の入射装置は世界に先駆けての開発。従来の正イオン (正の電荷をもつイオン) 方式に比べて電気的に中性なビームヘの変換効率が高い特性がある。電気を持ったイオンビームは磁場の影響を受けるので、電気的に中性のビームに変換して入射効率を上げる必要があり、この点で負イオン方式が格段に優れている。このため ITER でも負イオン方式の採用が有力となっている。

一方、プラズマ電流を加熱する高周波入射装置は、電子レンジの約50倍という高い周波数を持つ高周波をアンテナを伸ばして入射してやるもので、負イオン入射装置に、この加熱方式を加えることによってプラズマの電子温度は約1.6億度C に高めることに成功した。

ITER でめざすプラズマの温度領域は2〜3億度C であるが、今回の成果でプラズマ電流の高温、高密度化にこの二つの方式が十分な可能性を有することが確認されたといえる。


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