[原子力産業新聞] 2000年8月3日 第2049号 <1面>

[放射性廃棄物] 安全確保に国が適切な関与を

高レベル廃棄物処分の安全確保など

原子力安全委員会の放射性廃棄物安全規制専門部会 (部会長・浜田達二原子力安全研究協会常任理事) は7月26日、高レベル放射性廃案物処分に係わる安全規制の基本的考え方の素案を取りまとめた。高レベル廃棄物処分事業の実施主体が行う各段階での安全確保方策の的確な実施と国が適切に関与することが重要であると指摘している。同部会は今後、考え方を最終的に取りまとめた上で原子力安全委員会に報告する。

今回取りまとめた素案は、5月に高レベル放射性廃棄物処分に関する法律が成立したことを受け、現時点における高レベル廃棄物の処分に係わる安全確保原則や安全確保の考え方、処分の安全規制のあり方等に関する基本的な考えをまとめたもの。

まず、高レベル廃棄物処分事業の展開を(1)立地段階(2)事業許可申請(3)建設段階(4)操業段階(5)閉鎖段階(6)管理段階・事業廃止−に段階分けした上で、処分の安全性を長期にわたり確保するためには、実施主体による地層処分に適した処分地の選定に続いて、事業許可申請から事業の廃止に至るまで、各段階に対応した安全確保方策を講じることが肝要と指摘。その際、安全基準・指針等の策定をはじめ、事業の各段階で原子力安全委員会が適切に関与することが重要との考えを示している。

高レベル廃棄物処分の安全規制について、事業許可申請時には、実施主体は選定された処分地に応じて適切な工学的対策を施した処分場を設計し、国がその妥当性について安全評価を行うことで安全確認することが必要としている。この安全評価では、高レベル廃棄物処分の安全性を確保するためのサイト選定や工学的対策を踏まえた上で、地層処分の安全性に影響を及ぼす可能性のある現象を考慮したシナリオに対し適切なモデルとパラメータによる解析を行い、一般公衆に対する評価線量が最大となる時期においても、あらかじめ基準値として定められた放射線防護レベルを超えないことの確認が基本だとしている。時間の経過とともにモデルやパラメータの不確実性が増すことから、必要に応じ検討も必要と付言している。

また安全評価の結果が確実に担保されるよう、建設や操業の段階で技術上の基準に適合しているかなどの確認を行うことが重要だと指摘するとともに、処分場閉鎖の段階においても建設・操業段階で得られたデータを追加し、安全評価結果の妥当性を確認するとしている。

素案では、今後策定される具体的な安全基準・指針等に関するスケジュールも示している。高レベル廃棄物処分法に基づき、実施主体が今後、概要調査地区、精密調査地区、最終処分施設建設地を選定することになるが、事業の進展にあわせ、(1)精密調査地区選定の開始時期までに、処分場の設計要件、安全評価に係わる安全指標とその基準備、安全評価シナリオ等を定めた安全審査基本指針を策定する。また安全研究による新しい知見を基本指針に取入れ、安全審査開始前までに安全審査指針を策定する。(2)さらに最終処分施設建設地の選定がなされるまでに、建設段階から事業廃止までの各段階で国が確認すべき事項を規定した技術基準を策定する−と示されている。

処分地に要求される環境要件について、多重バリアシステムが長期にわたり所期の性能を発揮できるよう適切な環境要件を満たす処分地の選定が重要で、地質環境はもとより鉱物資源の賦存状況にも留意するよう求めている。

また、今後留意すべき事項として、処分地の選定が進むに従ってサイト固有の状況に応じ、基準・指針等を具体性を持った詳細なものとしていくことが重要だとしている。さらに、今後の安全基準・指針等の策定や安全審査、安全確認に際しては、安全規制の透明性確保のため適切な構報公開により国民の十分な理解を得ることが肝要であると付け加えている。

同専門部会では、遅くとも冬までには基本的考えを最終的に取りまとめた上で、安全委員会に報告したい考え。


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