[原子力産業新聞] 2000年8月10日 第2050号 <1面>

[インタビュー] 中澤原子力局長に聞く

「新長計を多くの人々に」

昨年の JCO 臨界事故とその後の安全対策の強化、新長期計画策定に向けた審議など、原子力界をとりまく情勢が変化を見せるなか、原子力局長に就任して1か月余り。「原子力が大きくよい方向に向かうよう、目前の課題をひとつひとつクリアしていきたい」と語る中澤佐市科学技術庁原子力局長に話を聞いた。

−昨年以来 JCO 事故後の対応で多忙な時期を過ごされたが。

中澤局長 原子力安全・防災対策室長として、原子炉等規制法の改正および原子力災害対策特別措置法の成立に向け、中身の濃い仕事をさせてもらった。その後、原子力安全委員会の強化や行政庁規制体制の増強も行われた。また、事業者も NS ネットのピアレビューのように緊張感が持続されるようなシステムを創設することになった。JCO 事故は残念な出来事ではあったが、それをきっかけとしてなされたこのような取組みにより、原子力がよい方向に向かうことを願っている。

−原子力長計策定が大詰めを迎えているが。

中澤局長 長期計画策定会議のもと、国民・社会へのメッセージとなる長計を年内の最終取りまとめに向けて、事務局としてもあと一踏ん張りといったところ。近くまとまる報告書案に対しては、パブリックコメント制度の趣旨を踏まえ、インターネットや意見を聴く会を通し広く国民の声を聴いていくことになろう。長期計画は原子力関係者だけでなく、なるべく多くの人々に読んでもらうことがポイントだと思う。

−高レベル廃棄物処分法が成立したことについては。

中澤局長 長計第一分科会での議論のように、廃棄物問題の見通しがつかないことが原子力の「光と影」の影であったわけだが、法律の成立で大きな前進を見ることになった。国会での審議でも、今後政府と事業者が一体となって処分事業に努力していくべきとの指摘をいただいているので、科学技術庁としても協力していきたい。

− ITER 計画の進展については。

中澤局長 3年間延長された工学設計活動を経て、実現可能性の高い設計がまとまり、4月からは政府間の非公式協議もスタートした。ITER 計画は大きな国際共同プロジェクトではあるが、日本がこれまでに蓄積した核融合研究のポテンシャルもあるので、いかに計画に参加していけぱいいのか、腹を固める段階。ITER 懇談会も再開されたところであり、誘致も含め政府部内でも年内に考え方の整理を行いたいと考える。大きなプロジェクトであるから、国内で関係する方々の熱意がうまくまとまっていくことが大事なので、我々としても努力を惜しまない。

−省庁再編で来年1月より文部科学省となるが。

中澤局長 国民の原子力の理解を助けるためにも教育の重要性が指摘されている。文部科学省として発足することで、原子力も含めたエネルギー問題や地球環境問題等について、学校教育・社会教育の場でより充実した施策が行われるものと期待されているし、我々としてもそうしていきたい。これまで原子力界が正しく理解をしてもらうための分かりやすい情報提供が不十分だった点は反省し、今後この課題に一層取り組むことは大変重要である。

−民間の原子力関係者に対して一言。

中澤局長 原子力事業者には、何よりも安全な運転の実績を積み重ねていただきたいのと同時に、自らの体力強化と技術の継承や人材の育成が重要であろう。そのための協力は行いたいと考える。


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