[原子力産業新聞] 2000年8月24日 第2051号 <1面>

[長期計画] 報告書案まとまる

国民・社会へのメッセージ込め

原子力委員会長期計画策定会議は報告書案をまとめ、22日に開かれた原子力委員会で、那須翔座長から大島理森委員長に提出した。

同案は7月24日の会合で審議された素案に、委員から出された意見などを取り入れ加筆・修正が行われ、11日の会合を経てまとめられたもの。「一連の事故などで原子力政策に対する不安感・不信感が高まっている事を謙虚に反省し、また今世紀における原子力の歴史を踏まえ、解決すべき課題と原子力の多様な可能性を引き出すために取り組んでいくべき長期的展望を提示する。また厳しい状況の中で、原子力関係者のための具体的指針にとどまる事なく、国民・社会および国際社会に向けたメッセージとしての役割を重視する」といった視点から、(1)国民や国際社会の理解を前提に、原子力発電を引き続き基幹電源として推進する(2)核燃料サイクルを引き続き原子力政策の基本とする事が適切(2)高速増殖炉については、将来のエネルギー選択肢として研究開発を継続する−などの基本方針を定めたことおよび、主要計画の具体的な達成時期を明記していない点は、前回示された素案と同じだが、今回の案では新たに、現在稼働中の日本原燃・六ヶ所ウラン濃縮工場の生産能力を「年間1,500トン SWU」規模まで着実に増強させる必要性や、低レベル放射性廃棄物の処分についてはその合理性を追求する観点から「同一の処分場に複数の方法による処分を実施する」ことなどが盛り込まれた。

原子力委員会で那須氏は、「昨年5月以来策定会議と各分科会での審議を経て計画案をまとめた。この間臨界事故が発生し、本当に原子力を推進する必要があるのかとの原点に立ち返った議論も行った」と、審議経過を振り返り、報告。これに対し大島委員長は「幅広い構成の委員により多様な議論が行われたことと思う。国民・社会に向けたメッセージとしての内容になったと期待する」と応えた。さらに那須氏は、長計案に対する国民からの意見募集を開始することや、東京、青森および福井で「ご意見をきく会」を開催する予定であることを伝えた。

続いて行われた記者会見の席上、那須氏は「多彩な委員が率直な意見を述べるなかで、両論併記ではなくひとつの意見にまとめられた」「ここまで成長した民間に委ねられる部分は多くあっても、国が果たすべき役割は当然残っている」「従来の長計は約5年毎に改訂され原子力関係予算との関わりが深かったが、見直すべきは原子力開発の理念や哲学ではないか。それが報告書案ではメッセージという形で表れている」と、策定会議座長としての感想を述べた。


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