[原子力産業新聞] 2000年8月24日 第2051号 <2面>

[原研] 新抽出剤、99%以上を分離回収

全アクチノイドに対応

日本原子力研究所はこのほど、酸濃度の高い水溶液から全種類のアクチノイドを、99.9%以上というこれまでになく高い効率で分離回収できる抽出剤の開発に成功した。

新しく開発された抽出剤は TODGA と呼ばれるもので、これを使用すれば従来は核燃料の再処理廃液からの回収が難しかったネプツニウム、アメリシウム、キュリウム等のマイナーアクチノイドも全て抽出が可能だという。

TODGA 抽出剤にはこのほか、(1)大線量の放射線照射による抽出能力の劣化がないため、50〜100回程度繰り返し使用することができる(2)使用後は完全に焼却処分が可能(3)再処理工程で使用される希釈溶剤にもよく溶ける(4)合成が容易である−といった利点があるため、高レベル放射性廃液の処理にも適用できる。TODGA による分離を行いマイナーアクチノイドを回収できれば、大強度陽子加速器や原子炉を利用して、安定核種や短寿命核種に変換するオメガ計画の進展にも大きく寄与するものと期待される。計画が進めば、ガラス固化を経て最終処分される核分裂生成物も貯蔵期間が短くてすむため、環境への負担も軽減されることになる。

また、この抽出剤は原子力分野以外でも、例えば希土類金属の分離精製用に用いることができるという。

原研関係者は、「今後数年をかけ、廃液処理の工程や実際の廃液を用いた環境で試験を行っていきたい」と話している。


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