[原子力産業新聞] 2000年8月31日 第2052号 <6面>

[東京大学] 超臨界水冷却炉を考案

44%熱効率実現に見通し

東京大学の岡芳明教授、塚腰誠一助教授らの研究グループは、超臨界水を冷却材に用いる高性能発電用原子炉の概念をとりまとめた。

1989年から研究を始めて、同91年からは東京電力との共同で研究を進めてきたもので、10年あまりを経ての成果。これまでに、超臨界水を冷却材に用いた熱中性子炉の炉心設計、高速増殖炉・高速炉の炉心設計、プラントシステムと安全設計、流量や圧力、反応度異常過渡、事故解析、あるいは制御・起動停止、熱効率の評価などに取り組んできた。

超臨界水は220気圧という高圧下で374度C以上に熱することで得られ、気体と液体の中間的な性質をもつ。沸騰現象がないので、蒸気と水の分離が必要なく、再循環させるポンプ類を省けるために発電システムが単純かつコンパクト化できる。火力発電所で約40年にわたって使用されており、長年蓄積された経験を踏まえて開発できるので、高い信頼性を達成できるメリットがあるという。

これまでの検討のなかで、5%濃縮の二酸化ウランを燃料とする170万kW クラスの炉概念をとりまとめた。炉心のエンタルピーを上昇できるので、熱効率が向上し、44%もの熱効率 (改良型 BWR では34%程度) を実現できる見通しを得たという。

このほか、大出力化や建設期間の短縮、長サイクル運転への対応など、軽水炉がこれまで改良過程で取り組んできた課題に対応可能とみられており、熱効率の向上も稼働率向上やコストの低減効果を見込める可能性を示している。貫流型炉で熱効率も高いとなれば、冷却材の流量を低減して機器の小型化もねらえ、百数十万kW クラスを考えた場合でも冷却水系統を二系統でまかなえるという。格納容器内の冷却水エンタルピーは改良型 BWR の4分の1程度であるため格納容器を小型化できるなど、軽水炉の改良路線では限界のある、新たな可能性を追求できる特長を有している。

最近、西欧では、この超臨界水を用いた原子炉に関心が高まっており、仏、スイス、フィンランド、ハンガリーの研究機関や電力、メーカーによる共同研究開発が開始されることになっている。東京大学も呼びかけに応じて参加を決めている。

日本では、日本学術振興会の未来開拓事業の一環として超臨界水の放射線化学、熱流動、材料に関する実験的研究が東京大学の勝村庸介教授を代表として開始されている。

同概念は、基本的に原子炉容器・制御棒が PWR に類似し、格納容器・安全系が BWR に類似している。プラントシステム (貫流型) としては超臨界圧火力に類似しており、今後、炉材料の検討を含めて、原子炉として最適なシステムとして概念の具体化が内外で進められることになる。


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