[原子力産業新聞] 2000年9月7日 第2053号 <1面>

[ITER計画] サイト誘致に仏も名乗りか

国内誘致でも議論活発化

国際熱核融合実験炉 (ITER) の建設誘致をめぐる動きが今秋から本格化しそうだ。科技庁によると、すでに民間ベースで誘致活動を展開しているカナダに加え、これまであまり誘致に関心を示さなかったフランスが急きょ強い関心を示し始めたという。

8月30日、東京・千代田区の自由民主党本部で同党有力議員らの核融合に関する勉強会が開かれ、加藤紘一氏、山崎拓氏、額賀福志郎氏、町村信孝氏、尾身幸次氏、森英介氏らが出席した。ITER の最近の動向について科技庁、原研らから説明を受けた。

その中で、科技庁の小中元秀審議官は来年7月には立地を希望する各極はそれぞれ一か所の候補地を掲げ、2002年末までには立地を最終的に決定し、新たな ITER 実施 (COEDA) 協定を締結することになるとの見通しを述べた。すると日本が最終的に候補地を一か所に絞り込むタイミングは実質上遅くとも来年7月の数か月前頃ということになる。また同氏は、カナダはトロントの東約60キロのクラリントン、フランスはカダラッシュに候補地を絞っているようだとしている。実際の建設は2005年から約10年間となるが、仮に日本に誘致されると年間費用は数百億円となる見通しだ。

議員からは、「誘致賛成の総意が得られていない日本学術会議などでもトータルとしての賛成の意向を表明しておくことが大切。誘致を決めたら国際的責任を果たせるよう体制を整えておくことが重要だ」(尾身議員) という意見や、「核融合実用化を技術のブレークスルーで早める努力も必要」との発言も出された。

一方、加藤氏や山崎氏は「(日本の誘致には) 産業界等の盛り上がりに欠けるのでは」との懸念を表明した。山崎氏は「ある経済団体の人達に IAEA を応援しないかと聞いたところ、あまり関心を持っていないようだった。核融合は市民権を失いつつあるのではないかと思った。もっと啓発が必要であり、気を引き締めていかなければならない」と政府の担当者にはっぱをかけた。さらに、環境問題なども含めて ITER 計画を考えることも必要なのではという意見も出された。

ITER 誘致をめぐる議論は原子力委員会でも本格的な検討が始まったばかり。年末までに誘致についての見解を出し、来春にも原子力委としての見解を決めることになる。科技庁の中村雅人核融合開発室長は「議論の大前提として、ITER が成功するためにはどうしたら一番良いのかとの視点から議論することが重要」と語る。日本に立地するのが本当に良いかどうかも含め、広範囲な観点からの深い議論が期待される。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.
Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。