[原子力産業新聞] 2000年9月7日 第2053号 <2面>

[IHI] 高レベル廃棄物処分場の操業システムの概念まとめる

既存技術での成立性に見通し

石川島播磨重工業は、高レベル廃棄物処分場の操業システムの概念設計を電力共通研究および核燃料サイクル開発機構からの委託研究の中でとりまとめた。わが国での高レベル廃棄物処分は地層処分が基本。この基本的な考え方に沿って処分場に運び込んでから地下に搬送し、定置するまでの一連のシステムを具体化した。同社では、日本原燃が青森県六ヶ所村で操業/建設中の返還廃棄物受入れ・貯蔵施設や高レベル廃液ガラス固化・貯蔵施設、およびサイクル機構のガラス固化技術開発施設 (TVF) の設計、建設を手がけてきており、これまで培ってきた技術を結集することで、既存技術での対応が可能との見通しを得た。


使用済み燃料を再処理した際に出てくる放射能レベルの高い放射性廃棄物はガラス固化し、キャニスタと呼ばれるステンレス製の容器に密封されて、最終的に安定な地層を選んで、最終処分することが考えられている。また地下に埋設される際には廃棄物を収めたキャニスタをオーバーパックという金属製の容器に収納し、粘土状の緩衝材をその周りに充填するなど、人工バリアと呼ばれる安全機能を付加して、長期的に安定した環境で、放射性物質を閉じ込める措置がとられることになっている。

最終的な処分場の選定はこれからの課題であるため、同社では、埋設されるキャニスタの本数や、処分場を作る岩質、想定される処分場の基本的な設計条件を設定。そのうち、岩質としては、わが国の地層条件から結晶岩質と堆積岩質の2つの場合を想定、処分深度は500mから1,000m。処分孔に定置する形式としては立て置きと、横置きを検討した。また廃棄物を運び込む方式については垂直に搬送する立坑と、斜めに坑道をつけて専用の搬送車で運び込む斜坑の2つのケースをあげた。

処分場で取り扱う対象物は主に廃棄物を収納したキャニスタ、人工バリアとしてオーバーパック、緩衝材など複数ある。基本的な作業は、輸送されてきたキャニスタを受け入れ、所要の検査を行ってオーバーパックに収納し、地下の施設に搬送、定置する作業があり、地上の施設から地下の施設へと作業エリアが広範囲にわたることから、概念設計にもこうした諸条件を考慮して、さまざまなケースに対応して概念設計を行った。また作業によって直接作業員が取り扱うことができる作業と、放射線管理の観点から遠隔操作で行う必要のある作業などを区分して対応する必要があり、工程の具体化とともに、非管理区域での作業、管理区域での作業との区分も行った。

こうした作業工程を具体化したうえで、必要な廃棄物搬送、定置装置の概念設計を行った。立坑の場合はエレベータタイプの搬送装置を、斜坑の場合は坑道内をタイヤ走行する装置を考案した。オーバーパック、緩衝材を地下の処分施設に定置する装置もそれぞれ検討し、遠隔操作や保守性などの点を含めて既存技術の延長で対応できることを確認した。キャニスタを収めたオーバーパックを処分孔に定置するに際しては、地下施設まで搬送した後専用の搬送定置装置に移し替える。正確な位置決めが必要になるためで、例えば縦置きの場合は、レール軌道方式の定置装置を使い、ITV カメラと位置決めセンサなどで遠隔での監視、操作を行って処分孔に定置することを考えている。

作業の安全確保にあたっては、例えばオーバーパックを搬送している時に停電などがあっても落下することのないよう、これまでに実績のある保持措置を採用するほか、しゃへい体やバックアップ機構を装備して、装置故障時にも作業員が接近できるよう工夫する考え。また各搬送、定置装置の設計仕様はなるべく共通化して、保守性にも配慮する方針だ。

わが国の高レベル廃棄物の処分は、新原子力長計案で2030年代にも操業の開始をめざす方針が示されており、事業の法的な枠組みも固まった段階で、今後事業化へのプロセスが段階的に進展していくものとみられる。同社ではこうしたプロセスを経て明らかになってくる処分場の条件を踏まえ、基本設計、詳細設計へと取り組みを進めていくことにしている。


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