[原子力産業新聞] 2000年9月14日 第2054号 <4面>

[原研] 花びらの形決める遺伝子をイオン照射で発見

日本原子力研究所は7日、イオンビームを植物の種子に照射し、花びらの先端がフリル状になる新しい突然変異体を作り出し、花びらの形を決める遺伝子が存在することを発見した、と発表した。

近年の遺伝子解析の発展から、いつ花が咲き、どの部分が花びらやおしべになるのかなどについて次第に明らかになってきているが、花びら自体の形がどのように決まるのかはこれまで分かっておらず、それに対応した突然変異体も得られていなかった。

原研では、シロイヌナズナの種子に原研高崎研がもつイオン照射研究施設 (TIARA) の高エネルギー炭素イオンビームを照射することによって突然変異の誘発を試み、その次世代で花びらとガクの先端部だけがギザギザでフリル状になる突然変異体を作り出すことに成功した。シロイヌナズナの野性株の種子 (M1) 約1,500個に TIARA のサイクロトロンを用いて炭素イオンビーム (150グレイ) を照射して育成し、次世代 (M2) の種子約1万2,000個を取り、これを生育させたところ、花びら先端がギザギザのフリル状に変化した個体ができたもの。シロイヌナズナではこれまで多くの突然変異体が得られていたが、花びらの形だけが変化した変異体は今回が初めて。変異体の特徴からフリル (Frill) と名付けられたこの遺伝子は、花びらの形成後半に働き、細胞の分裂や伸長に必須な因子であることがわかった。

今回のフリル遺伝子の発見は、花びらの形がどのように決定されるのかを知る有力な手がかりを見つけたことになり、近い将来花びらの形を自在に変える育種技術の開発につながる。


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