[原子力産業新聞] 2000年9月21日 第2055号 <3面>

[欧州議会] テメリン1号機起動問題でチェコに安全性の再評価を要請

7日に開かれた欧州議会 (EP) の緊急会合で、チェコのテメリン発電所が臨界に達する前に包括的な環境影響評価 (EIA) の実施を求める決議が可決された。これに対してチェコ政府は、「法的拘束力はまったくないが決議内容を了承する」との見解を明らかにしている。

隣国オーストリアやドイツの反対にも拘わらずチェコ国営電力 (CEZ) およびチェコの原子力規制当局は「テメリン1号機 (97万2000kW、PWR) の安全性や技術的なレベルは西側諸国に匹激する」として起動に向けた準備作業を進めており、オーストリア政府は8月末、同炉の安全性が確認されずに起動された場合、同国はチェコの欧州連合 (EU) 加盟を阻止するとの強硬方針を決定した。こうした混乱を収拾するため、EP は緊急に討議した結果、包括的な EIA を実施せずに同炉の試運転を始めることへの懸念を表明するとともに、適切な環境防護手順を取らずに同炉を送電網に接続しないようチェコ政府に要請する決議を可決。一般大衆に対してもこの問題に関する詳細な情報が提供されるよう勧告したもの。

ただし、EP のP.バラギオラ報道官によると今回の決議は毎週木曜日に開かれている EP 会合で緊急の措置として可決されたむので、政治声明的な意味合いはあっても何ら拘束力は持たない。また、内容もテメリン発電所の起動阻止を訴えているわけではなく、この問題をチェコの EU 加盟申請とも特に結びつけてはいないと明言している。

一方、チェコ政府は今回の EP 決議がチェコ代表の意見を無視して可決されたと指摘しており、この件が緊急措置扱いで議論されたことにも遺憾の意を表明。不正確で誤った情報が含まれているとも指摘しており、今後は、この問題を担当する EU の議会委員会とチェコとの会合が開かれ、チェコ側代表から事情を十分説明する機会が与えられることを祈るばかりだと語っている。


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