[原子力産業新聞] 2000年9月28日 第2056号 <2面>

[防災訓練] 「原災法」施行後、初の総合防火訓練を島根で実施

「原子力災害対策特別措置法」が6月に施行されてから初めての原子力防災訓練が中国電力の島根原子力発電所で10月28日に実施される。JCO 東海事業所で発生した臨界事故を教訓に原災法に防災訓練の実施が盛り込まれているもので、内閣総理大臣を本部長とする災害対策本部を設置し、関係閣僚が参加して行われる。副本部長を通産大臣がつとめ、災害対策本部の事務局は、通商産業省に置かれる。訓練の行われる鳥根県では、松江市内の島根県職員会館に政府の原子力災害現地 対策本部 (オフサイトセンター) が指定され、現地対策本部長に通産総括政務次官をあてて現地指揮を行う。関係省庁はじめ、地元の島根県、鹿島町が参加するほか、日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構等の研究機関、地元報道機関も参加する、これまでにない大規模かつ総合的な防災訓練が展開される。

実際の訓練では、島根2号機において、運転中に原子炉冷却系に幾つもの事故が重なり、全ての非常用炉心冷却装置の機能が喪失し、これにより炉心が損傷し、放射性物質が原子力発電所敷地境界外へ放出されるという原子力緊急事態を想定し、現地と国の災害対策本部が適切に連携して対応する危機管理体制全般にわたる確認を行う。また防災計画を検証し、より実践的なものにするための課題を抽出するほか、地域住民の訓練参加への参画により、原子力防災及び原子力安全に対する理解の向上を図る。

訓練内容は、国、地方公共団体及び原子力事業者共通の訓練として、(1)原子力事業者からの通報、原子力緊急事態宣言の発出等に係る通信連絡訓練(2)所要の資器材の整備、オフサイトセンターの立ち上げ等に係る訓練(3)現地の原子力災害合同対策協議会 (国の現地対策本部、地方公共団体等が緊急事態応急対策について相互に協力するための組織) の運営等に係る訓練−を実施する。

また国が主体となって行う訓練として、(1)通商産業大臣が行う緊急事態の発生の判断、内閣総理大臣への報告、公示・指示案の提出(2)内閣総理大臣が行う原子力緊急事態宣言の発出等に係る訓練(3)原子力災害対策本部 (本部長・内閣総理大臣) を設置し、現地等からの情報の収集、分析、応急対策の実施等に係る訓練(4)政府職員の派遣、政府の原子力災害現地対策本部 (本部長・通商産業総括政務次官) の要員の派遣に係る訓練 (自衛隊機で現地オフサイトセンターまでの輸送等) (5)原子力災害現地対策本部の運営等に係る訓練−を行う。

地方公共団体が主体となって行う訓練 (国が協力) としては、(1)地方公共団体の災害対策本部の設置、現地等からの情報の収集、分析、必要な応急対策の検討、国の専門家の派遣要請等に係る訓練(2)原子力発電所周辺の住民等の避難・退避、避難所の開設、受入れ等に係る訓練(3)自衛隊、警察、消防、海上保安庁等の部隊による避難誘導、緊急輸送、モニタリング支援、海上警備等の応急対策等に係る訓練(4)地上、海上、空中からのモニタリング、医療活動、よう素剤の配布等に係る訓練(5)避難用車両の誘導、交通規制の実施、住民等への広報、避難指示地域周辺における警戒活動等に係る訓練−など。このほか現地では自衛隊機等による現地輸送訓練も実施される予定。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.
Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。