[原子力産業新聞] 2000年10月5日 第2057号 <1面>

[長期計画] 青森県で「意見聴く会」

核燃料サイクル政策焦点に

原子力委員会長期計画策定会議 (座長・那須翔東京電力相談役) は2日、青森市内で第2回目の「ご意見をきく会」を開き、青森県在住の7名を含む10名の発表者から長期計画案に対する意見を聞いた。

まず意見を述べた六ヶ所村在住の僧侶、福澤定岳氏は、原子力政策には柔軟性のある現実的な対応が求められるとして、拙速に走ることなく地元と都市の住民を巻き込んだ全国的な議論を展開していくべきだと主張した。

核燃料サイクル政策や六ヶ所再処理工場建設計画に関しても、地元の発表者からは「FBR 開発が進展していない状況で、将来にプルトニウムが十分利用される保証がない」「わが国では再処理単価が英仏に比べ高い」などの理由を挙げ、建設計画の見直しを求める厳しい意見が聞かれた。

この日、意見発表者として参加予定だった木村守男青森県知事に代わり、蒔田弘一むつ小川原開発・エネルギー対策室長は、「長期計画案の中で核燃料サイクル政策について変わりがないと示されたことは重要と考える。国と事業者の役割をしっかり果たすべき。数値目標が記載されないことで、燃料サイクル政策に変更が生じるのではとの危倶も生じている。国は毅然とした態度で原子力政策を進めてもらいたい」と述べるとともに、青森県で廃棄物処分に関する説明会を開催するよう要望した。

神奈川県から一般公募により参加した益田恭尚氏は、「エネルギー密度と安定供給の点からは、好むと好まざるとにかかわらず化石エネルギーの代替は原子力である。欧米では原子力発電開発が中断しているが、エネルギー事情が厳しい日本こそ原子力に取り組む必要がある」と発言。同じく一般公募者として稲田勝彦氏は、原子力発電所での事故発生の約6割が配管亀裂によるものだと指摘し、亀裂防止対策が安全対策の重要部分を占めるのではないかとの意見を述べるとともに、情報公開で最も重要なことは、事故の際の正確な情報であるとした。

さらに、放射線教育に関して阿部由直弘前大学教授は、長期計画案が放射線教育の推進と具体的プログラムを実行していく必要を記述している点を評価し、大学内に教育環境を緊急に整備することが必須であるとした。


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